2007年12月17日(月) |
引継ぎが出来ていない! |
こちらの日記に何度も書いたことですが、僕は歯医者として患者さんの治療をしている合間に某専門学校で非常勤講師として講義を担当しています。この非常勤講師、前任者は親父でした。親父が高齢のため自分の後任として僕に声をかけたのです。僕は熟考の末、非常勤講師の職を受け継ぐことにしたのですが、しばらくして僕は親父と一緒に某専門学校に挨拶に行きました。親父は某専門学校の担当者に後任である僕を紹介し、名刺交換をさせてもらいました。その後、親父からは担当科目の資料をもらい、講義や某専門学校の概要、学生のこと、授業や試験のことについて教えてもらいました。今から思えば親父からの非常勤講師の引継ぎは比較的上手くいったように思います。
まず、親父から講義内容と某専門学校についての詳細な情報提供がなされたことは僕にとって大きなプラスでした。何の前知識も無い状態であった僕に対し、自らの経験と知識を分かり易く教えてもらったことは、非常勤講師に対するイメージをもつことに役立ったと思います。 それよりも大きかったことは、人と人との関係です。非常勤講師を担当するには単に講義を行うだけでなく、某専門学校の担当者との意思疎通が欠かせないわけですが、前任者である親父と某専門学校との担当者との意思疎通は良好だったようです。非常勤講師の中には付き合いにくい講師や意思疎通が取りにくい講師もいるそうですが、親父はそういうタイプの講師ではなかったようです。
「○○先生(親父のこと)には何かにつけてお世話になり感謝しております。」
某専門学校の担当者がしばしば僕に言っていることを考えると、親父と某専門学校との担当者との間には信頼関係があったのは間違いありません。それ故、息子である僕を自分の後釜として紹介しても、某専門学校の担当者は何の不信も抱かず、異論を唱えず僕を後任として受け入れてくれたように思います。
どんな仕事でもそうだと思いますが、特定の仕事を引き継ぐ際、前任者が仕事を充分に把握し、周囲との人間関係も良好で、言葉に伝えにくい細かいニュアンス、暗黙の了解事項などを伝えてくれると、後任はストレスなく仕事を引き継ぐことができるものです。ところが、世の中常に引継ぎが上手くいくとは限りません。僕自身、何度か引継ぎ上手くいかず、苦労をした経験があります。
その一つが現在仕事をしている、地元歯科医師会のある事業に関する仕事です。地元歯科医師会の会長からある事業のことを担当することを依頼された僕は、前任者に教えを請うべく、連絡を取ろうとしたのですが、前任者は
「引継ぎ事項についてはきちんと書いておきますから。」 の一言のみ。 実際に渡された引継ぎ事項に関する紙はボールペンで走り書きをしたメモのファックス一枚でした。僕は何度か前任者にお伺いを立てたのですが、
「そんなにまじめに仕事をしたらしんどいだけだよ。」
引き継いだ事業に関して、僕はいい加減なことはしたくありませんでした。少しでも前任者の情報を聞き出し、スムーズに事業を継承したかったのですが、前任者にやる気がなく、逃げ出すように、半ば放り出すように僕に下駄を預けるような引継ぎだったのです。そのため、僕は引き継いだ事業の全体像を理解し、仕事をしだすのにかなりの労力を要しました。中でも苦労したのは、その事業に関係している関係者との関係でした。
僕が関係者の何人かと挨拶をしたのですが、その際、前任者は全く姿を現しませんでした。僕が事前にお願いをしていたにも関わらず、まったくなしのつぶてだったのです。挨拶の際、関係者が僕に浴びせる視線に非常に厳しいものを感じました。右も左もわからない後任の僕に対して失礼な態度だなあと内心思っていたのですが、今から思えば、前任者の仕事ぶりがいい加減だったこと、そして、常に上から目線というのでしょうか、相手のことをバカにしたような態度を取り続けていたことが相手に対し非常に心証を悪くしていたのです。そのため、関係者とすれば、前任者の後任に対しあまり良い印象を思っていなかったようです。 僕が後始末をし、その関係者との関係を修復するために、こと細かく意思疎通を図っていったことは言うまでもありません。最近では、何とか僕のことを信頼してくれるようになってきたと思うのですが、前任者がもっとしっかりしていれば、このような不要な努力はいらなかったはずなのにと思わざるをえません。
最近のニュースを見ていると、過去に行われた事件、事故について被害者に多大な迷惑をかけている事例を目にしますが、このような事例の中にはいい加減な引継ぎ、情報伝達の不具合が原因になっていることが多いのではないかと思います。仕事というもの、いつまでも自分一人で行えるものではありません。誰かに引き継がないといけない時が来るものですが、少なくとも僕は自分の行ってきたことを後任者にはいい加減に引き継ぎたくない、責任をもって自分が持っているものを全て伝えられるようにしたいと考えています。
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