歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2007年12月07日(金) 口の中は宝の山 乳歯バンク設立

昨日、僕はある小学生の抜歯をしました。その歯とは乳歯。乳歯が抜け落ちていない状態にも関わらず永久歯が生えてきていたのです。このような場合、乳歯を放置しておくと後続永久歯の歯並び、かみ合わせの乱れの原因となります。そのため、永久歯の一部が生えてきたにも関わらず乳歯が抜けていない場合、抜歯の対象となります。昨日の小学生も抜歯を行なったわけです。抜歯した乳歯は小学生と親御さんに見せ、家に持って帰ってもらったのですが・・・。

診療が終わり自宅でニュースを見ていると、このようなニュースが流れていました。

名古屋大学医学部の上田教授らのグループが、乳歯から骨や神経など様々な細胞に分化する能力を持つ「幹細胞」を取り出し、再生医療に役立てる研究をするため、学内に「乳歯幹細胞研究バンク」を設立したと発表したとのこと。
乳歯は同大付属病院など6病院から提供を受け、数年で1万個程度の幹細胞を収集、研究データを集めて臨床応用を目指すそうです。同大によると、大学などの公的機関に乳歯の幹細胞バンクを設置するのは世界初。
 幹細胞を使った再生医療では、骨髄や臍帯血(さいたいけつ)がありますが、乳歯の幹細胞はこれらに比べて、細胞の増殖能力が高く、採取が簡単なことから、実用化に期待が集まる可能性が高いとのこと。
 上田教授らは子犬の歯から取り出した幹細胞で親犬のあごの骨を再生できることをすでに確認しており、近親者の再生医療に使える可能性もあるとのこと。上田教授らは犬の実験例を重ねて研究成果を発表したうえで、厚生労働省や学内の倫理委員会の審査を経て、人の臨床実験を実施したいとしているそうです。
 上田教授は「これまで捨てられていた歯が有効活用できるうえ、受精卵からつくられる胚(はい)性幹細胞(ES細胞)に比べ、倫理的な問題も少ない。将来的には、孫の乳歯で祖父母の骨粗しょう症による骨折や傷跡などを治療できる可能性がある」と話しているようです。

先に京都大学の研究グループもES細胞がらみで成果と出していましたが、彼らが利用していたのも口の中の粘膜の細胞でした。今回の名古屋大学のグループは脱落する乳歯や親知らずを研究対象としています。
上のニュースでも書いていますが、これまで再生医療では骨髄や臍帯血、受精卵などを研究対象とすることが多かったのですが、いずれの場合も簡単に利用できる代物ではありませんでした。特に人間から骨髄や臍帯血、受精卵を取り出すには体の負担が大変だったわけですが、口の粘膜や脱落し、捨てられるような乳歯や親知らずとなると、さほど体に負担をかけることなく容易に取り出すことができるのが大きな利点となります。

現在、世界中で再生医療の研究が行われていますが、今後ますます口の中を対象とした再生医療の研究は進むことでしょう。ある意味、口の中は再生医療にとって宝の山ともいえる、そんな時代に突入した感さえあります。


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