2007年12月05日(水) |
甘いお菓子が嫌いな女の子 |
僕が世話になった恩師K先生にはお嬢さんが一人いました。Hちゃんというお嬢さんでした。身長が高く、スリムな体型。目鼻立ちのはっきりとした顔からは美人と呼ぶにふさわしい彼女。 Hちゃんはご両親に厳しく躾けられた影響で、非常に礼儀正しく、物腰の柔らかいお嬢さんなのですが、変わった点が一つありました。それは甘いお菓子が嫌いだということです。
女性といえば甘いものに目が無い人が多いのではないでしょうか?昨今のスイーツブームでも各地のスイーツを販売しているお店に出入りする人の多くは女性。女性とスイーツは切っても切れない関係にあると言うことは決して言い過ぎではないと思います。 甘いものが好きな人が多い女性の中で、Hちゃんは心から甘いお菓子が嫌いなのです。どうしてHちゃんは甘いお菓子を嫌うようになったのか?それはHちゃんのお父さん、K先生に理由がありました。
K先生の専門はむし歯の予防に関する研究でした。むし歯はむし歯菌が口の中にある砂糖を取り込み、代謝して出す乳酸によって歯が溶かされる病気です。むし歯を予防するには、いくつかポイントがあるのですが、その一つがむし歯を作り出すむし歯菌の活動、代謝を抑制することです。具体的にどうすればいいかというと、口の中に入れる砂糖の量を制限するということです。むし歯菌が好物としている砂糖を口の中に入れなければむし歯菌は生きていくことができず、結果として乳酸を出すことがなく、むし歯にならないというわけです。
かつてK先生は、動物実験でこの事実を何度も確かめていたのですが、実際の人間でも言えるのかどうか確かめたく、自分の子供で確かめようとしたのです。それがHちゃんだったわけです。K先生はHちゃんには生まれてから15歳になるまで甘いお菓子を一切食べさせなかったのです。三度の食事はきちんと取らせていました。また、三度の食事の間の間食も食べさせていたのですが、砂糖が含まれていない食べ物のみ食べさせていたといった徹底ぶり。
かつて、日本マクドナルドの創始者である藤田田は幼少期の食事の嗜好が一生の食事の嗜好に影響すると語っていました。マクドナルドが子供向けメニューの開発に熱心に取り組んでいる理由の一つは、少しでも多くの子供にマクドナルドの製品を食べてもらい、美味しいことを実感してもらうことにより、将来にわたりマクドナルドの顧客として足を運んでもらうことを狙ってのことです。
K先生も幼少期の食事の嗜好がその後の大人になってからの嗜好に影響することを知っていました。K先生はHちゃんに甘いお菓子を一切食べさせないようにした。その結果、Hちゃんは見事に甘いお菓子を好まないようになってしまったというわけです。
実際のHちゃんの口の中はどうなったでしょう?これも見事なのですが、Hちゃんは乳歯、そして、生え変わった永久歯に至るまで一本のむし歯になることはありませんでした。K先生のもくろみは大成功といっていいでしょう。甘いお菓子を食べることがむし歯発生に大きく関与していることを実証したのです。
甘いお菓子を好まなくなったHちゃんでしたが、困ったこともあったようです。それは友達付き合いがうまくいかなかった時があったことです。 女の子同士、集まって話しに華を咲かせる際、甘い物を食べたり飲んだりしながら話をすることが多いものですが、甘いものを好まなかったHちゃんは、出された甘いお菓子に手をつけることがなかったため、時には奇異な目で見られたとのこと。付き合いのため、仕方なくお菓子を食べたそうですが、心底甘いお菓子を美味しいと感じながら食べたことはないのだとか。どちらかといえば苦痛に近い感じでお菓子を食べながら話をしていたそうです。
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