2007年10月17日(水) |
携帯電話とニートとの関係 |
ニートという言葉が世の中に浸透し、社会現象の一つとして取り上げられているようになって久しい今日この頃。既に皆さんもご存知のことと思いますが、ニートとはNEET(Not in Education, Employment or Training)のことで、教育を受けている学生でもなく、就職をしている就労者でもなく、職業につくための訓練を受けているわけでもない人たちのことを指します。何もせず、ただブラブラしているだけの若者は以前からいたように思うのですが、改めてニートと名づけられることで世の中から改めて注目され、社会問題化している側面があるようです。現在、ニートはどれくらいいるかというと日本全国に約60万人いるのだとか。ニートを放置することは、将来の日本に大きな悪影響を与えかねません。
先日、某歯科雑誌を読んでいるとある大学のカウンセラーの人のインタビュー記事が載っていました。このカウンセラーが取り組んでいる仕事の一つがニートの人たちを対象にしたものだそうで、インタビュー記事ではニートに関して興味深い指摘をされていました。それは、ニートを生み出している背景には携帯電話の普及が大いに関係しているのではないかという指摘でした。
このカウンセラーがニートの人たちと接して感じることは、ニートの人たちは経済的にそれなりの余裕のある家庭に育ち、食うに困らない生活を過ごし、何もかも与えられるような環境のもとで育ってきていることなのだとか。幼少の頃から周囲で全てお膳立てされるような生活を過ごしてきた若者は、自分で考え、行動する習慣を持たないまま成長し、何となく生きていく感覚しかもたなくなってしまうのだとか。何となく生きていく感覚しか持たなくなると、人と人との付き合い、コミュニケーションを取るのも億劫となり、結果的に社会や他人との関係が希薄になる。そのことで自分の殻だけに閉じこもり、結果として教育を受けない、就労しない、訓練を積まないニートになっていくのだそうです。
ニートの人たちが育ってくる環境に大きな影響を与えている要因の一つが携帯電話なのだとか。携帯電話は24時間いつでもどこでも電話やメールを送ることができる非常に便利なものですが、その一方で携帯電話に頼るがあまり、第三者と話をする機会が少なくなる。その結果、周囲の人たちとの接点が激減し、さらに同世代の人たちとの間でも深い付き合いができず、お互いが腹を割って話をすることが面倒になる傾向があるのだそうです。
今や携帯電話数は日本全国で9930万台だそうで、ほぼ日本人の一人が一台の携帯電話を持つようになってきています。恐るべき携帯電話数です。日本人の生活にとって携帯電話はもはや欠かせない生活必需品の一つになっているのかもしれません。このような携帯電話は人々のライフスタイルにも大きな影響を与えています。 2〜3年前、僕の大学の後輩に話を聞いたことがあるのですが、彼氏、彼女との電話をする時はもっぱら携帯電話なのだとか。家の固定電話に電話をかけることはほとんどないそうです。驚くべきはけんかの時。相手との間がぎくしゃくし、けんかをする時はメールでするのだとか。何とも時代が変わったものだと実感しました。 僕が大学生時代は携帯電話のようなものはありませんでした。当時、僕にも付き合っていた彼女がいましたが、彼女と連絡を取るためには彼女の家の固定電話に電話をかけざるをえませんでした。彼女が実家を出てどこか間借しているのであればよかったのですが、当時付き合っていた彼女は家族と一緒に実家に住んでいました。そのため、彼女に電話をかける時には彼女の実家の固定電話に電話をかけざるをえなかったのです。
今から思えば、彼女の家に電話をかける時はいろいろと緊張したものです。まずは電話をかける時間帯。あまり遅すぎると彼女の家族に迷惑をかけてしまいます。夜電話をかけるにしてもある程度早めの時間帯に電話をかけるように心がけたものです。 最も緊張したのが、僕が電話をかけた時に誰が出るかということでした。どの家庭でもかかってきた電話を最初に取る人は決まっています。彼女のお母さんであったり、お父さんであったりしたものです。彼女以外の家人、特に目上の人が出てきた時には、非常に気を遣ったものです。 “夜分遅く申し訳ありません”など相手に対する配慮をする言葉を発しながらも何とか彼女に代わってほしいと願いながら電話口で汗をかいたりしながら、彼女が電話口に出てくるとホッとしたものです。その後は長電話をかけ続けたのは言うまでもありません。後で親から長電話で電話代がかかることで何度も文句を言われたものですが、今となっては青春の思い出の一つとなっています。
そんな思いをしていた僕からすれば、今の大学生は恵まれているなあと思っていたのですが、携帯電話の普及はメリットだけでなくデメリットもあるようなのです。
今回の記事のカウンセラー曰く、固定電話は不特定多数の自分よりも目上の人や他のコミュニティの人に対する接し方を肌で学ぶ、コミュニケーション能力を実践で学ぶ会話力が鍛えられる貴重な場であったのだとか。電話口から相手の様子を感じ取り、相手に対する配慮をする言葉を学ぶ。そのことで、自分は多くの他人の中で生きているということを実感してきたそうですが、携帯電話の普及はこうした貴重なコミュニケーションの機会を失うことになったというのだとか。
学生時代に携帯電話があれば、もっと自由に彼女と連絡が取れたのになあと思っていたのですが、いろいろと制約があった中での彼女の自宅への電話は、決して無駄ではなかったのだなあと感じた、歯医者そうさんでした。
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