歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2007年10月15日(月) 最高の医療なんてありえない!

昨日、親父が買ってきた某月刊雑誌を見ていると表紙にこんなことが書いてありました。

特集 最高の医療

特集の内容を読んでみると、医者の中でも名医と呼ばれている医者が一目おく名医を紹介し、彼らが実践する最先端治療を報じたものでした。特集の中では10人の医師とその仕事ぶりが紹介されていました。中には僕が全く知らなかった分野の先生の話も書いてあり、同じ医療で仕事をする僕としても興味深いことが掲載されていました。

記事そのものにケチをつけるつもりはありませんでしたが、僕が疑問に感じたことがありました。それは特集記事のタイトルである“最高の医療”です。

医療という世界は日進月歩であることは間違いありません。多くの技術や知識、経験をもとにより良い医療を世界中の医療人が追及し続けているわけですから。医療の一分野である歯科の世界ではさほど進歩していないように思われがちですが、それでも新しい器具、材料、薬物などが生み出されているのが現状です。

ところが、このような医療の進歩とは裏腹に病気に罹る人は減少してはいえ
ません。むしろ、増え続けているといっていいでしょう。これまで無視されてきたことが医療の進歩により病気として治療対象になるようなこともあります。エイズのようにアフリカの一地方での病だったものが世界中に波及するようなことも出てきています。花粉症なる症状は一昔前には考えられなかったことですが、現在では多くの人々が春先を中心に花粉症に悩まされています。また、神経難病のように原因が全くわからず、治療は対症療法しかない疾患もあります。まだまだ未解決、未発達な分野が数多くあるのが医療なのです。

医者は誰もが自分が培った経験、知識をもとに最善を尽くそうとしています。治療を施している時点において自分の能力の発揮できる中で最良の医療を提供しようと努力しているものです。世の中の医者の中でこの能力が最も秀でている医者のことを最高の医者言うのであればそうかもしれません。
今回の特集記事では、それぞれの医療分野の最先端治療を行っている人たちを取り上げていましたが、現時点において最先端治療を行っている医者が最高の医療を提供できる医者と呼べるかもしれません。けれども、名医と呼ばれる医者であればあるほど、最高の医療を目標にはしているでしょうけども、未だに自分たちが最高の医療を行っている実感はないはず。追求すれば追及するほどまだ道は長く、奥が深い。そういった感覚を持ち合わせているはずです。日々、試行錯誤しているものなのです。時には表には出せないような苦い経験もあるものなのです。

まだまだわかっていないことが多く、日々より良い医療を追求している現状を考えれば、最先端の医療、最善の医療はありえても最高の医療はありえないのではないか?
”最高の医療”という特集記事のタイトルを見て疑問を感じざるをえなかった歯医者そうさんでした。


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