歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2007年10月14日(日) 夫婦同士の適度な距離感

昨日はかつて僕が所属していた大学歯学部某教室のOB会に出席してきました。僕自身、10年ぶりの出席だったのですが、参加してびっくりしました。それは、参加者の中で僕は最も若かったからです。今年齢41歳の僕が最も若いという某教室のOB会。常連の先生は70歳代の先生方で多くは大学歯学部教授をしていて、現在は退官しているような人ばかり。
幹事を担当していた先生はもっと若い世代の先生の参加をできるような改革がOB会に必要だということを訴えていましたが、70歳以上の先生が大挙してそろうような会には若手の先生の足が向かないのは無理もないのではないかと感じましたね。OB会の雰囲気が若い先生が入っていけるような雰囲気ではありませんでしたから。僕もこれまでこの某教室のOB会を避けていましたが、今回は諸事情により参加せざるをえませんでした。参加してみると、予想通りというべきでしょうか、自分の居場所を見つけるのに苦労をしました。出された食事や飲み物はほとんどのどを通らず、諸先輩方への挨拶に終始したような肩身の狭いOB会でありました。

そんなOB会ではありましたが、何人か女性の先輩の先生方が数名参加されていました。皆さん、女性歯医者であったのですが、興味深い共通点がありました。それはご主人が皆歯医者であったということです。
最近、女性歯医者が多くなってきていますが、女性歯医者の中には同業者と結婚する場合があります。学生時代から付き合ってきてそのままゴールインしたような人たちや大学クラブや教室の先輩、後輩関係といった場合が多いように思います。昨日の某教室OB会の女性歯医者の先生方もこの例に漏れずに同業者と結婚されているのですが、面白いことに皆さん、同じ歯医者であるご主人と一緒に仕事をしている人たちだったのです。歯医者同士のカップルであれば大いにありうることですが、皆さん異口同音に言われていたことがあります。それは、

「家でも主人の顔を見て、職場である診療所でも主人と一緒。いつも主人と一緒なので疲れる。」

ある女性の歯医者の先生は、自ら歯医者をせず受付に専念するようになった(患者数が少ないという事情があるそうですが)そうですし、別の先生は家庭内別居のような形を取り、自宅の中では夫婦顔を合わさないようにしているとのこと。皆さん、ご主人と離婚をするというような状況では決してないようなのですが、少なくとも一日のうち、一定の期間は敢えて離れることにより過度の夫婦同士の接近を防ぐようにしているのだとか。

歯医者同士が結婚すると、このようなことになるだろうなあということは、僕は学生時代から予想していました。歯医者の仕事を考えると、ほとんどの場合、開業歯科医として生きていくことになります。そうなると、夫婦同士歯医者であれば、家庭だけでなく職場でも歯医者として接することになることは明白です。学生時代、僕は歯医者とは結婚したくないと考えていた理由がここにあります。いくら仲が良いカップルであったとしても将来にわたりずっと一緒に、四六時中顔を合わせ続ける夫婦になれば、どこか息苦しくなるに違いない。長い夫婦生活、これはかなりしんどいことではないか?
結果的に僕は歯医者ではない嫁さんと結婚することになるのですが、今となってはそれがある程度正解だったのではないかと感じます。

うちの歯科医院は、開業当初から親父とお袋が二人三脚で切り盛りをしてきたところがあるのですが、親父はつい最近まで外部の仕事であるいくつかの学校の非常勤講師や歯科医師会や学会の役職を続けてきました。親父がこれら診療以外の仕事を引き受けた背景には、親父が仕事を依頼されたということもあるでしょうが、それ以上にお袋との距離感を取りたかったところがあるように思えてなりません。その証拠に、親父は非常勤講師や歯科医師会、学会がらみの仕事に出かける際、一度として嫌な顔をしたことがありません。むしろ、“大変だなあ”と言いながらも表情はどこか緩んでいたものです。親父なりの夫婦の距離感を取っていたのではないかと思うのです。

歯医者でない嫁さんと結婚した僕ですが、それでも四六時中嫁さんと接しているとどことなく息苦しく感じる所があることは否定しません。嫁さんが嫌いだというわけでは決してありません。むしろ、嫁さん無くして今の僕はありえないと思っているくらいではあるのですが、実際の生活となってくると、時には夫婦同士が適度に離れて気分転換をはかることが必要ではないかと日々感じます。僕は自宅開業ですので、診療時間以外は基本的に嫁さんと一緒にいますから、そのことを強く感じます。嫁さんが幼稚園のママ友達に出会い、お茶をしたり、買い物に出かけたりすることがありますが、僕は非常に好ましいことではないかと思うくらいです。

このような僕の考え、冷めたところがあるでしょうか?そのように思われる方もいるかもしれませんが、ずっと長い間夫婦生活を続けていくには適度な距離感というものが必要ではないかと最近感じる、結婚12年目の歯医者そうさんです。


 < 前日  表紙  翌日 >







そうさん メールはこちらから 掲示板

My追加