| 2007年10月10日(水) |
口で感じる快感と生殖器で感じる快感 |
某歯科業界雑誌を読んでいると興味深い記事がありました。その記事とは、食べ物のおいしさを決める要素についての話です。
食べ物の美味しさを感じさせる要素として誰もが最初に思いつくのが味覚ですが、多種多彩のように思える味覚は5つの基本味から成り立っているのです。5つの基本味とは、甘味、苦味、酸味、塩味とうま味です。以前は甘味、苦味、酸味、塩味の4つが基本味とされていたのですが、最近になってうま味が国際的にも認められ、基本味は5つということになっています。 確かに人は食べ物の美味しさは5つの基本味から判断するのですが、それ以上に重要な役割を果たしている要素があるのだとか。それは、匂いと食感だというのです。
匂いに関しては、人には匂いを感じる受容体が300種類以上見つかっています。味覚では、甘味、苦味、酸味、塩味、うま味を感じる受容体がそれぞれ1種類しかないのに比べると圧倒的な数の違いです。人は味よりも匂いを繊細に感じるという証拠でもあります。このことは意外なように思えますが、よく考えてみれば、ダシの良く効いた吸い物や旬の果物、野菜の味の違いなどは味というよりも風味、すなわち、口から鼻に抜ける匂いを識別することによって得られる美味しさだということがいえるでしょう。
食べ物の美味しさを感じさせる要素の中で、この匂いよりももっと重要な役割を果たしているのは食感なのだとか。このことは僕が歯医者としてしばしば実感することでもあります。よく入れ歯を装着している患者さんに話を尋ねると、入れ歯をはめる前は美味しく感じていた料理が入れ歯をはめると美味しさに変化が生じた、美味しさがなくなってきたということを訴えることがあります。口の中に入れ歯という異物を入れていることによるものだと思いますが、入れ歯で噛む食感が天然の歯のそれとは異なり、歯ごたえが劣るのです。
この食感ですが、ある解剖学者の説によれば、食べ物の物理的な感触を快感に誘導するという意味においては、生殖器の感覚と同程度であるのだとか。明太子のつぶつぶを感じる時、バナナのぬめりのある怪しい快感、リンゴの切れるような感覚や貝柱のコリコリとした感覚など、枚挙にいとまがない口腔内の食感は食感を通り過ぎて快感の域にまで達しているのだとか。 そう言われればそうかもしれません。美味しいものを食べた時、頬が落ちるという表現が使われますが、この頬が落ちるという言葉は、美味しい物を食べ咀嚼していると、ついうれしくなり、頬の緊張が弛緩し、つい笑ってしまいたくなるような表情を見て名づけられた表現です。口の中で感じた美味しさによって得られた快感。いつい僕は限られた経験しかありませんが、口の中の感じる快感と生殖器で感じる快感は何か相通じるようなものがあるように思います。このように感じるのは僕だけではないような気がするのですが・・・。 男と女の営みとは異なり、さすがに食べ物を食べていて昇天してしまうようなことはないと思いますが、本当に美味しく感じる料理の食感は何物に代えがたい快感があることに異論はありません。
このような食べ物を食べて美味しく、快感をいつまでも味わうためにも、歯の健康を維持することは非常に大切なことであることは言うまでもありません。日頃から歯を丁寧に磨き、定期的な専門家による検診を受けることは、いつまでも食べ物を美味しく食べるためにも必要なことであるが言えるでしょう。
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