歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2007年09月27日(木) いつまで親が仕上げ歯磨きをするべきか?

昨夜、地元歯科医師会の中で勉強会があり参加してきました。勉強会には若手の先生が多かったのですが、皆勉強熱心で活発な意見のやり取りがなされました。
僕自身、こうした活発な論議にはいつも刺激を受けます。自分と同世代や後輩の先生が大半を占めていた気軽さもあってか、僕も日頃考えていたことを積極的に伝えることができたように思います。

さて、昨夜の勉強会の話題の中心は歯の予防についてでした。歯がむし歯や歯周病に侵されないためには、歯医者での治療だけでなく、患者さんの常日頃からの歯磨きが大切ですが、成長途中の子供の場合、どのように対処すればよいか?ある程度の年齢までは親が責任を持って子供の歯磨きの面倒をみていかないといけません。具体的には、子供が歯を磨いた後に親が子供の口の中をチェックし、仕上げ歯磨きを行う必要があるということです。

NHKの教育テレビを見ていると、幼児向け番組の中に“歯磨き上手かな?”というコーナーがあります。このコーナーは、幼児に対し歯磨きの大切さを説くと同時に歯磨き終了時には、必ず親に口の中の仕上げ歯磨きをしてもらうことを指導する内容のコーナーです。子供が一生懸命歯磨きをした後、大きな声で親を呼ぶのです。

「お母さん(お父さん)!」
すると、お母さんやお父さんが登場し、“仕上げはお母さん(お父さん)”というメッセージを流れると同時に子供の仕上げ歯磨きをするというシーンが映し出されます。
僕も何度かこの場面を見ていますが、幼児に対する歯磨き習慣づけ、親による仕上げ歯磨きの大切さを訴えるものとして、非常に多くの親子に良い影響を与えていると思います。理想的な歯磨き啓発番組コーナーだといって過言ではないでしょうか。

実際に幼児の歯磨き後、親が仕上げ歯磨きをしている家庭はかなり多いものと思いますが、それでは一体子供が何歳になるまで親が仕上げ歯磨きをすればいいのでしょう?昨夜の勉強会ではこのことが話題に挙がりました。
いろんな意見が出たのですが、結論としては、親の仕上げ歯磨きは、子供の乳歯が永久歯と完全に生えかわる時期まで行うべきではないかということになりました。すなわち、小学生の間は親が子供の歯磨き後の口の中の点検、仕上げ歯磨きをする必要があるのではないかということです。
子供がきちんと歯を磨ける技術があるのであればいいのですが、子供が適切な歯磨きを会得するのは時間がかかるもの。何度も手を変え、品を変え教えること。辛抱強く教えていくことによって初めて適切な歯磨きの仕方を理解し、実践することができるのです。ここに至る時間は小学生の間は充分にかかるのではないかということなのです。
また、乳歯が抜け落ち永久歯に生えかわる時期というのは、永久歯そのものが完全に形作られず、歯質も未熟なもの。この間に口の中が汚れていると、生えたばかりの永久歯は直ぐにむし歯になったり、歯の周囲の歯肉に影響が生じ、歯周病になりかねません。
歯磨きに対する子供の理解力と実践力、そして、永久歯の成熟度を考えると、どうしても子供だけに歯磨きをまかせるのは非常にリスクが高いといえるでしょう。親の積極的な関与、仕上げ歯磨きが必要ではないかということです。

小学生の高学年になっても親が仕上げ歯磨きをしていると、いつまで経っても子供が自立して歯磨きをすることができなくなってしまうのではないかと危惧する向きもあるのですが、結論としては、心配ないのではないかという意見が大勢を占めました。
仕上げ歯磨きをすることは単に親が歯磨きをしてあげているということではありません。あくまでも子供が歯を磨き、その補助的なこと、歯磨きが適切に出来ていないところをカバーする意味合いがあります。仕上げ歯磨きをしながら、子供にいろいろと話しかけるのです。“歯の裏側の歯肉との間をしっかり磨こう”とか“歯と歯の間はフロスを使おう”など言いながら仕上げ歯磨きを行うのです。そうすると、いつの間にか仕上げ歯磨きを受ける子供たちには、自分の歯磨きの足りない点が頭の中に刷り込まれ、いざ自分で全て磨く時には積極的に歯磨きができるようになる。子供は決して頼りない存在ではなく、むしろ時期がくれば自ずと親離れをしていく。そのことを充分に理解すれば、仕上げ歯磨きを小学生の間行っていても、小学生を卒業すれば自ずと子供は自分で歯磨きをすることができるようになるのではないでしょうか。


 < 前日  表紙  翌日 >







そうさん メールはこちらから 掲示板

My追加