歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2007年08月20日(月) 同じ写真を見ているはずなのに・・・

先週、嫁さんとチビ二人は嫁さんの実家に里帰りしていたのですが、毎日電話やメールで連絡を取っていました。嫁さんの実家あたりも非常に暑かったようで、毎日寝苦しい夜が続いていたとのこと。先週のある日などは、全国での中でも最高気温に近かった気温だったそうで、嫁さんも実家に帰ったもののバテぎみであることを言っておりました。

実家に戻った嫁さんからもらったメールの中に、チビたちの写真が添付されていました。どこかの施設で遊びに行っていたようで、楽しそうな様子が見えて取れたのです。
“暑い毎日が続くけども、冷房が効いているような室内で楽しそうに遊んでいるじゃないか?”僕はそのように感じたものです。

この写真を僕はお袋に見せてやりました。普段、一緒に暮らしている孫がこの1週間はいません。最初のうちは、何かと騒がしいチビたちから解放されてほっとしているような所もあったのですが、そろそろチビたちがいなくて寂しいだろう。ここはチビたちの元気のいい写真を見せてやって安心させてやろうと思ったのです。

チビの写真を見せてお袋の反応は意外なものでした。
「○○ちゃん(上のチビのことです)、元気にしているの?何だか体調を崩しているのか、元気がなさそう。この写真を見ていると何だか頬がこけて痩せているように思うのだけど。」

僕はもう一度チビの写った写真を見てみましたが、どう見てもチビたちが痩せているようには見えませんでした。元気よく楽しそうに笑っている表情のように見えたのです。どう考えても、お袋が言うように元気がなさそうには見えませんでした。そのことをお袋に伝えると

「そうかしら?写真のこのあたりを見てごらん。今までふっくらとしていた頬がやつれているように見えるよ。」

「これは写真の解像度の関係で暗くなっているだけで、痩せているようには写っていないよ。結構楽しそうに笑っている顔つきをしているじゃないか?」
僕はお袋に言ったのですが、お袋は納得した顔をしませんでした。

お袋と僕が見ていた写真は全く同じ写真なのですが、それが見ている人によって全く違ったものに見えていることに僕は改めて驚きを感じました。通常の写真と異なり携帯電話の写真ですから多少の解像度の悪さは否定できませんが、チビの様子が手に取るようにわかる写真であったことは事実です。そんな写真が見る人によって正反対に解釈することができるのか?
僕はつくづく客観的に見ることの難しさを感じざるをえませんでした。愚考するに、普段一緒に暮らしているお袋にとって、チビたちいない状況というのは非日常です。自分にとって何よりもかわいい孫がいない寂しさ、早く帰ってきてほしいという気持ちが日に日に増し、そのことが写真の見方まで左右し、影響を与えているのではないでしょうか。

この手のことは多くの人が経験していることだと思います。絵画や映画など全く同じ作品を見た時、見ている人の精神状態、思い込み、人生経験によって受け取り方が異なるものですし、同じ人でも、繰り返し見ているうちに見え方が異なってくることもあるものです。

僕の仕事である歯医者の仕事でもそんなことがあります。ある先生の見方と別の先生の見方が異なることがあるのです。これは歯医者としての技量、知識、治療経験の影響が強いわけです。よく歯医者が症例検討会と称し、過去に自分たちが経験した治療を他の先生に見てもらい、意見交換をすることがあるのですが、このような機会は先生同士の視点の違いが明確に現れる機会でもあります。同じ患者さんの写真、レントゲン写真、模型、治療経過などを確認しながら過去の治療について検討するということは、お互いの視点の違いを見る上でも有意義なことですし、自分に足りなかった点を把握する貴重な機会でもあります。

同じものを見ているのに、受け取り方が人によって異なる。客観的に見ることって難しいものだなあとしみじみ感じた、猛暑にバテ気味の歯医者そうさんでした。


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