2007年07月09日(月) |
餅より咽喉詰めしやすい食べ物とは? |
昨日は日曜日ですが、僕は朝早くからある歯科関係の某学会を聴講しに行ってきました。僕は日頃患者さんの口の中を治療している歯医者ですが、学会や講演会では、普段の治療経験や歯科関係の論文、雑誌だけでは得ることのできない最新の治療法や知見などを知ることができます。せっかくの休みではありますが、定期的に学会や講演会に参加し、聴講することは歯医者として必要なことではないかと思っています。
さて、今回の某学会の感想ですが、全体的に興味深い内容でしたが、中でも僕が非常に興味深く感じたことは、ある事故に関する講演会でした。その事故とは食べ物の咽喉詰め事故に関すること。 これまで咽喉詰め事故に関する報告は歯科医院単位、病院単位で行われることが多かったのですが、昨日の講演では、近隣の数市の消防局に救急車の要請があった咽喉詰め事故について、3年間に消防局に残っていたデータを調べたものであり、以前の報告と比べかなり広範囲の事故の様子がわかる内容のものでした。 咽喉詰め事故に関しては、食事の時間帯に頻発しているとのこと。これは考えてみれば当たり前のことのように思いますが、実際のデータとしてまとめられたグラフを見ると、その傾向は一目瞭然。特に、夕食付近の時間帯に咽喉詰め事故が多いのが目に引きました。
咽喉詰めに関しては60歳以上の高齢者が多く、しかも統計学的に男性よりも女性に頻発していることが報告されていました。どうして女性の多いのか、理由は不明なのだそうですが、多分に女性の方が寿命が長いことが影響しているのではないかという演者の考察がありました。
僕が最も関心をもったのが、どんな食べ物で咽喉詰めを起こしやすいかということです。誰もが餅ということを想像するかもしれません。僕もそのように考えていました。ところが、実際の報告例ではそうではなかったのです。 咽喉詰め事故を起こしやすい食べ物では、餅は第二位でした。最も咽喉詰め事故を起こしやすい食べ物とは、それはパンだったのです。 どんなパンかということに関心がいくかと思いますが、これが実に意外でした。それは、水やジュースなどに浸して柔らかくしたパンで咽喉詰めをするケースが多いというのです。よく高齢者の人で自分の歯が少なかったり、入れ歯を装着している人の場合、パンを食べる際、硬くて噛みにくいということで、パンを水などに浸して食べる方がいると思います。僕の周囲でもかつて入れ歯になった祖父や祖母がよくパンを水に浸して食べていたものですが、この行為が最も咽喉詰めを起こしやすいのだとか。 どうしてこのようなことになるのか、詳しい解明はまだのようですが、会場に講演を聞き入っていた参加者からは驚きの声が上がっていました。 また、第三位に挙がっていたのはご飯。ご飯に関しては、汁気を含んだものやそうでは無いものに違いはなかったのだとか。 意外と報告で少なかったのはゼリー。昨今こんにゃくゼリーによる咽喉詰め事故が多いという報道が多く、僕の日記でも取り上げましたが、これに関しては3年間で2〜3例程度ということのようでした。
それにしても、咽喉詰め事故の原因で最も多いのがパン、しかも、水に浸したパンであるというのは歯医者として注意しなくてはいけないことです。柔らかくしているから安全に食べ、飲み込むことができるとばかり思いがちですが、高齢者の場合、そうではない。むしろ、嚥下反射の衰えは想像以上であることを思い知らされた次第です。今後の高齢の患者さんに対する食事指導に役立てるようにしていきたいと思います。
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