歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2007年06月19日(火) 陣痛よりも痛い、最強の痛みとは?

先日、僕はある歯科関係の講演会を聴講してきました。講演会の内容は口腔顔面痛について。口腔顔面痛というと何やら難しく聞こえますが、実際は歯や歯肉に問題がないのにも関わらず歯や歯肉が痛いと感じる痛みのことです。

患者さんが歯や歯肉が痛いと訴えると、歯医者は歯や歯肉に異常がないか調べるわけですが、多くの場合、むし歯や歯周病が原因です。これら異常を見つけては適切な処置を施すわけですが、数は少ないながらも歯や歯肉に全く異常が認めらない場合があるのです。
これまでそういった痛みは、不定愁訴として片付けられていたことが多かったのですが、最近の研究でどうやら原因があることがわかってきたのです。
僕が参加した講演会はそうした口腔顔面痛の症例を紹介した講演会だったのですが、中でも興味深かったのは、人間が感じる痛みの中で最強の痛みについてでした。

人間が感じる痛みの中で最も痛いと感じる痛みといって何を想像するでしょうか?歯痛でしょうか?確かに歯痛も我慢できない痛みではありますが、以前ここでも取り上げたように、出産を経験した女性なら出産痛、陣痛が最も激烈な痛みだと答えるかもしれません。
今回の講演会では、陣痛よりも更に激烈な痛みがあるという話だったのです。その正体とは、群発頭痛。
群発頭痛とはあまり聞き慣れない言葉かもしれません。群発頭痛とは読んで字の如く、頭痛の一種なのですが、20歳代〜40歳代の男性に多く現れる痛みで、目の周りを中心に奥歯や側頭部に現れるのが特徴なのだそうです。
どんな痛みかというと、患者さんの訴えによれば

“のたうちまわるような大激痛”
“焼け火箸を突っ込まれたような痛さ”

とのこと。痛さのあまりじっとしていられず、歩き回ったり、床を転げまわるような動作があり、夜中に現れるとあまりの痛さに目が覚めてしまい、眠れないとのこと。持続時間は15分〜3時間ぐらいで酒を飲んだ後に必ず症状が現れる特徴があるというのです。

この群発頭痛、症状が頻繁に起こる群発期と症状がおさまっている寛解期があるのが特徴で2年周期ごとに群発期と寛解期が交互に現れるのだとか。

群発頭痛の原因は、歯や歯肉ではなく、頭にある動脈である内頸動脈に炎症が生じたために発症するそうで、神経内科医が治療する病気なのですが、症状が歯に現れるため、歯痛と勘違いする患者さんが後を絶たないようです。歯医者も歯だと思い込むところがあり、神経の処置をしたり、場合によっては抜歯をしてしまうケースもあるそうで、これら処置を行っても症状が続いているためにお手上げになってしまった歯医者が多くいるようで、今回の講演会では群発痛の鑑別方法を教授してもらったわけです。

この群発頭痛について、講師が下のような話をしてくれました。

「数は少ないのですが、女性の患者さんで群発頭痛と胆石痛、陣痛と歯痛を経験された方がいらっしゃいました。いずれも耐えるに耐えられない痛みの代表みたいなもので、よくぞこれら4種類の強烈な痛みを経験されたなあと思うくらい貴重な体験をされた方だと思います。その患者さんにどの痛みが一番痛かったか質問してみました。何と答えられたかわかりますか?最も痛かったのが群発頭痛だったのです。その次が胆石痛、陣痛、歯痛という順番だったそうです。いろいろな文献を調べてみると、群発頭痛は人類最強の痛みという表現が見られるのですが、実際に様々な痛みを経験された人の体験談からも、群発頭痛の痛みが最強の痛みであることを知らされたように思います。」


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