2007年06月18日(月) |
日本人の平均学力は小学四年生 |
幼少のころ、僕は母親の祖父と一緒に暮らしていました。親父とお袋が結婚した際、半ば親父が婿養子のような形でお袋の実家で住んでいたからなのですが、僕が初孫であったせいでしょうか、親父以上に僕のことをかわいがってくれていたのが祖父でした。 祖父は長年、公立小学校、中学校で教師として働いていたのですが、僕が物心ついた頃には地元中学校の校長を務めていました。祖父には、夕方、中学校から帰ってくるや否や、いきなり日本酒をコップ一杯呑む習慣がありました。孫であった僕が日本酒が入った一升瓶でコップに酒を注ぐと非常に喜んでくれていたことを今でも記憶に鮮明に残っています。酒が入り、陽気になった孫の僕にはいろいろと話をしてくれたのですが、その話の中で今でも覚えている話の一つが、日本人の学力についての話です。
「日本人って優秀だってよく言われるけど、本当はどれくらいの学力かわかるか?本当はな、小学校4年生くらいの学力しかないんだよ。うそだと思う人が多いかもしれんけど、これは本当なんや。わしが長年先生として現場に立っていた経験から言えることなんやで。」
わけがわからないまま聞いていた幼少の僕でしたが、妙に”小学校4年生”という言葉が何かキーワードのように印象に残っていました。
あれから30数年、僕は41歳になりました。自分の子供の一人が小学校3年生になってきました。時々、子供の勉強の具合を見ることがあるのですが、驚いたことの一つに、小学校2年生からの授業内容からレベルが一段高くなっていることがあります。小学校2年生までと比べ、授業の内容、進むスピードが異なっているのです。さながら、スローペースだったマラソンレースが何キロかの地点でいきなりペースアップしたかのような状態とでも言えばいいでしょうか。かつて僕自身、同じような教育を受けてきてはいるのですが、改めて自分の子供が小学校教育を受けている姿を見てみると、小学校3年生の授業内容というのは明らかにレベルアップしていることがよくわかります。しかも、その内容というのが大人から見てもかなり高度なのです。その証拠の一つを今日は下に紹介します。上の子供は学校の授業だけではなく、ある通信教育を受け勉強しているのですが、国語の課題の文章です。
みなさんが歯と言っているところは、ほんとうは、歯の上半分です。もも色の歯ぐきの中には、歯の根が長くのびて、あごのほねにつながっています。あごのほねの中で、新しい歯が生え始めると、古い歯の根が、下のほうから自然にとけてなくなっていきます。歯をささえている根が、なくなってしまうのですから、その結果、歯がぐらぐらになるのは当たりまえです。
けれども、虫歯でもない歯が、なぜ新しい歯と生えかわったりするのでしょうか。
それは、みなさんがずんずん成長していくからです。手や足のほねは、みなさんの体が大きくなるにつれて、のびていきます。歯がくっついているあごのほねも、おおきくなります。歯がぬけるのは、大きくなったあごのほねに合うような、新しい大人の歯と入れかわるためです。
ぬけてしまう子どものときの歯は、上下合わせて二十本です。新しく生えてくる大人の歯は、全部で三十二本ですから、十二本多く生えてくることになります。この多く生えてくる大人の歯は、全部おく歯で、あごのほねが大きくなるにつれて、順々に生えてきます。
前歯がぬけて、新しい歯と生えかわる前に、じつは大人のおく歯が、そっと生えてきます。このおく歯のことを、特に六才きゅう歯とよんでいます。六才ごろ生えるので、こうよぶのです。
六才きゅう歯は、初めて生える大人の歯です。この歯は、もう生えかわることがなく一生使うものです。そして、いちばんがんじょうでかむ力が強い歯でもあります。ところが、この六才きゅう歯が、歯のなかで最も虫歯になりやすいのです。
どうして、六才きゅう歯は、虫歯にかかりやすいのでしょうか。
それは、この歯の上の深いみぞや、となりの歯との間のすきまや、生え始めのときの歯ぐきとの間のすきまに、さとうや食べかすがたまって歯にくっつくからです。
歯にさとうや食べかすがくっつくと、口の中にすんでいる虫歯さんが、元気になってきます。そして、さとうや食べかすと力を合わせて「さん」を作り出し、歯にあなをあけて、虫歯を作るのです。と国、生えたばかりの歯は、まだしっかりかたい歯になっていないので、虫歯になりやすいのです。 平成十二年度版 日本書籍 教科書四下 35ページ〜38ページ 「じょうぶな歯を作る」 今西 孝博
どうでしょうか?小学校3年生とはいいながら実際は小学校4年生の教科書からの出題です。漢字の数は少ないものの、大の大人が読んでも読み応えのある内容であることがおわかりかと思います。しかも、内容は歯のこと。専門家である僕が読んでもかなり正確な内容が書かれてあります。正直言って、大人の中にこの内容を理解している人がいるかというと、結構な割合で“知らない”と答える人がいるはずです。
たかだか小学校3年生、4年生の教育内容だと思っていると、実は大人が読んでも恥ずかしくない内容だということがわかると思います。 祖父が語っていたのは、今から30年以上前のことですが、その言葉の意味は未だに通用するように思えてなりません。むしろ、ゆとり教育を受けてきた世代の人たちの場合、平均学力は小学校3年生、4年生以下かもしれません。
亡くなった祖父はこのようなことも言っていました。
「知識人とか教養人と呼ばれるためには、中学校3年生の教科書の内容がわかっていれば十分だ。」
今更ながら長年教職についていた祖父の指摘が如何に鋭かったか、思い知る歯医者そうさんでした。
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