歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2007年06月07日(木) やっと安眠することができました!

最近、うちの歯科医院で多いのが歯痛の患者さんです。患者さん自身、痛み止めを飲んだり、噛み方を工夫したりして痛みを我慢しようとしていたものの、痛みは治まらず、挙句の果てには夜眠れないくらい痛みがひどくなる。その結果、仕方なく歯医者を受診する患者さんが多いように思います。

歯痛の原因の中で最も多いのがむし歯によるものでしょう。むし歯が深く進行し、神経近くまで達した場合、ある時を境に突如激痛に襲われる方が多いようです。
むし歯は突然出来るものではありません。ある程度の時間の経過とともに歯の表面から深部へ進行していきます。
初期のむし歯の場合、エナメル質に留まっている場合がほとんどですので、むし歯があってもほとんどの方は症状もなく気がつかない場合が多いでしょう。定期検診でたまたまみつかったようなケースが多いはずです。むし歯が象牙質に達すると、冷たい物を飲むとしみたり、痛みが生じるものの我慢しているうちに症状が無くなるようなことがあります。この時に、歯科医院を受診し、治療しておけば、神経の処置まですることはないはずなのですが、そのまま放置してしまう人がいるものです。そのような方が何か物を噛んだり、飲んだりしたことをきっかけに突如、激痛に襲われる瞬間があります。むし歯菌が神経にまで達し、神経が炎症を起してしまった結果です。
一度神経が炎症を起してしまうと、神経は自ら炎症を抑えることができません。とうことは、痛みが持続し、痛み止めを飲んでも痛みが止まらなくなることがあるということです。
こうなると、神経そのものを取り除く必要があります。歯痛が我慢できなくなって歯科医院を来院する患者さんはこのような患者さんが多いのです。

そこで歯医者の出番ということになりますが、往々にして神経が炎症を起こし、痛みが持続する歯は麻酔が効きにくいもの。その理由の一つ麻酔注射液の化学的特性があります。
麻酔注射液は化学的には酸性なのです。人の体の中は中性ですので、酸性の麻酔注射液が浸透、拡散しやすいものなのです。
ところが、炎症が起こった神経は酸性になってしまいます。炎症により酸性の化学物質が神経から放出されるために酸性になってしまうわけですが、この時に麻酔注射液を浸透させようとしても、同じ酸性ということで麻酔注射液が浸透しにくいのです。そのため、麻酔の注射を打ったもののなかなか麻酔が効かないことが多いものです。
僕もこれまで何度も麻酔が効きにくい歯の神経を治療したことがありますが、そのような場合、いつもよりも多めに麻酔注射を打ったり、場合によっては炎症が起きている神経に直接注射を打つこともありました。さすがに神経の直接麻酔の注射を打った瞬間、患者さんは飛び上がるほど痛がられますが、注射液を注入していくと確実に神経の痛みはなくなります。

充分に麻酔の注射をしてからいざ神経の治療を行うわけですが、奥歯であればあるほど神経の処置には時間がかかります。その訳は奥歯の方が根っこが多くあり、枝分かれしている本数が多くなるためです。通常、大臼歯と呼ばれる奥歯には神経が3つ枝分かれしていますが、中には4本枝分かれしているものもあります。それに比べ、前歯では通常は根っこが一本であるため、神経も1本しかありません。そのため、治療もスムーズに終わるのですが、奥歯の場合、前歯3本〜4本分の処置をするようなもので、そのため治療時間がかかるというわけです。
奥歯の神経の治療には非常に多くの労力が必要なのです。

ただし、神経の治療を適切に行うと、あれほど苦しんでいた歯痛から見事に解放されるもの。多くの患者さんは、次回来院時、歯の痛みから解放されたことを喜ばれるものです。

「先生、夜も眠れないくらい苦しかった歯痛が全くうそのように無くなりましたよ。治療の終えた日の夜は熟睡できました。」

眠れなかった夜を安眠できる夜にした事実。

日々患者さんの口の中の治療をしていて感じることは、歯の治療をすることにより症状が劇的に変化することで患者さんの信頼感を得ることが多いということです。歯の痛みや歯肉の腫れ、歯が欠けたり、入れ歯が割れたりした際、治療前と治療後では大きく症状が異なります。自分でどうすることもできず、駆け込んできた患者さん。その患者さんの悩みを取り去ることに成功し、患者さんの笑顔を見る事ができることは、歯医者冥利に尽きるところがあるものなのです。


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