2007年06月05日(火) |
もしも歯医者にテロリストがやって来たら・・・ |
昨日、報道されたこのニュースには正直言ってびっくりしました。 奈良県奈良市にある某病院の内科診療室内で、診察中だった医師が突然入ってきた男に腹部をナイフで刺されたというのです。男はその場で男性職員3人に取り押さえられ、駆けつけた警察官に殺人未遂容疑で現行犯逮捕されたのだとか。
これまでも、歯科医院を含めた医療機関には窃盗などの被害は少なからずあったものですが、先のニュースのようにいきなり医療機関に侵入して暴れたり、危害を加えるような事件も少しずつ出てくるようになってきました。
最近、僕が所属する地元歯科医師会の会員の歯科医院でのこと。患者だった男が突然、診療室内に入り込み暴れ始めたのだとか。身の危険を感じた院長先生は、地元歯科医師会の警察歯科医の先生の所へ助けを求め、警察歯科医の先生から警察に連絡、直ちに警察官が現場に急行し、男を取り押さえたそうですが、あまりにも突然のことで、精神的にまいっておられているとのこと。何とも気の毒としかいいようがありません。
昨日、偶然読んでいた某歯科雑誌にアメリカの某州の医院スタッフトレーニングに関する特集がありました。アメリカで活躍している日本人歯科医師による寄稿文だったのですが、その中に興味深い記述がありました。その内容とは、まさしく診療所に突然やって来る不審者に対する記述だったのです。
アメリカは50州からなる多国籍、多民族国家である国。広大なアメリカ大陸、及び周辺の島々には全部で50州あり、それぞれの州が独自の法律、行政を行っています。その中のある州の法律では、開業医に義務付けられているルールの一つに“診療所のスタッフトレーニング”があるとのこと。“診療所のスタッフトレーニング”なるものは決して珍しいものではなく、日本でも幅広く取り入れられてきているものでもあるのですが、そのトレーニングのガイドラインの中に以下のような記載があるというのです。
侵入者またはテロリスト、危害を及ぼすおそれのある来院者について
武装した来院者に対して 1.決してパニックを起さないこと 2.侵入者の持っている武器を注視しないこと 3.侵入者と目を合わさないこと 4.決して自分一人で対処、解決しようとしないこと
まるでどこかの飛行場のようなリスク管理ですが、これが今のアメリカの実情だというのです。銃社会であるアメリカならではのリスク管理です。それだけアメリカ社会というのは危険と隣り合わせだと思わざるをえません。
日本はアメリカほど銃社会ではないはずですが、それでも昨今の銃乱射事件を見ていると水面下で多くの拳銃が出回っているのは確かなようです。また、銃が無くてもナイフや包丁といったものならば比較的簡単に手に入りますし、凶器になりえます。
かつては患者さんの病気を治す医療機関に侵入し、危害を加えるようなことは考えられなかったはずなのですが、今やアメリカのように対策を講じなければならないようになってきているのかもしれません。
病院や診療所などの医療機関においては、患者さんに対するリスク管理という点に関してはかなり対応が整いつつあります。特に、この4月から医療法が大幅に改正されたのですが、この医療法の改正の目玉の一つが患者管理の徹底であり、医療機関が患者さんに対し安心して医療が受けられるような対策を採ることを義務付けているところがあります。 ところが、今回のように患者でもない輩が医療機関に入り込み、危害を加えるということに対して、ほとんどの医療機関は対応ができていないのが現状だと思います。
何とも怖い、物騒な、困った時代になってきたものです。
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