2007年05月31日(木) |
情報は東京に集中し、漏れないもの |
先日、僕の母校である某歯科大学の先輩歯医者の先生方との会合があり参加してきました。会合の後、懇親会があったのですが、その場で僕は以前から懇意にしている先輩の先生とに何人かの先生を紹介してもらいました。その中には、僕が学生時代に教授であった先生方が何人もおり、常に頭を下げっぱなし、緊張の連続でありました。当然のことながら、僕はそんな先生方の聞き役に徹しておりましたが、いろいろと興味深い話を聞かせてもらいました。 先輩歯医者の先生方の話の中に情報についての話がありました。話の趣旨は、情報というもの人口の多いところに集中しやすく、そこから末端へは伝わりにくい、伝わるのに時間がかかるという話でした。
一般に日本で最も人口が多い所といえば、首都である東京です。現在、東京都の人口は1270万人。東京は、単に人口が多いだけでなく、政治、経済、物流、文化などの中心でありもあります。 また、あらゆる情報が東京に集まり、全国、そして世界へ広がっていくといっても過言ではありません。現在はインターネットの普及により、情報は瞬く間に全国に、世界各地へ伝わっていくようなイメージがあるものですが、非常に微妙で繊細な情報(巷では“インテリジェンス”という外来語が使われているようになっているようですが)に関しては、インターネットでは伝わりにくいもの。未だに口伝えで伝えられるものが多いというのです。人というもの、誰もが知りえていない、知られたく無い最新の情報というものは秘めておきたいもの。同じ教えるなら自分の仲間内だけで抑えておきたい。そのようなことが微妙で繊細な最新の情報の拡散を防ぐことに繋がっているのです。
実は、歯科界においても東京に情報が集中する傾向にあります。どうしてそのようになるのか?それは歯医者も東京や首都圏に集中しているためなのです。
現在、日本全国に歯科医師を養成する大学歯学部、歯科大学は合計29校あるのですが、そのうち東京を中心とした首都圏には9校あるのです。
明海大学歯学部(埼玉県坂戸市) 東京歯科大学(千葉県千葉市) 日本大学松戸歯学部(千葉県松戸市) 日本大学歯学部(東京都千代田区) 日本歯科大学(東京都千代田区) 東京医科歯科大学歯学部(東京都文京区) 昭和大学歯学部(東京都品川区) 鶴見大学歯学部(神奈川県横浜市鶴見区) 神奈川歯科大学(神奈川県横須賀市)
これだけ歯科医師を養成する大学があるわけです。しかも、東京歯科大学、日本大学、日本歯科大学、東京医科歯科大学歯学部の4校は、それぞれ戦前から歯科医学専門学校として設立されていたため歴史もあります。そのため、歯科医師の数も東京を含めた首都圏には非常に多く集中しているのです。それでは一体どれくらいの歯医者が東京や首都圏にいるのでしょう? 現在、日本には9万5千人の歯医者がいるのですが、首都圏には概ね3万6千人余りの歯医者が集中していることになります。
東京都 16300人 神奈川県 6500人 千葉県 4500人 埼玉県 4500人 栃木県 1300人 茨城県 1800人 群馬県 1300人 山梨県 600人
すなわち、日本全国の歯医者の約4割が首都圏に集まっていることになります。中でも東京都の歯医者の数は他の首都圏の歯医者の数を圧倒しています。 これだけ歯医者が集中していれば、歯科関連の情報も東京に集中せざるをえません。 今はインターネット全盛の時代、情報は直ぐにワールドワイドに広がるではないかと思われる方もいるかもしれません。確かにそういった一面はあります。また、学問的な医療の話に関しては全国各地の歯医者同士で交流が進み、お互いが最新の知識、経験を共有できるようになってきています。 ところが、歯科の情報の中でも、非常に微妙で繊細な情報に関して東京に一極集中する傾向にあるというのです。その理由は、歯科の非常に微妙で繊細な情報の総元締めが厚生労働省であり、厚生労働省が首都東京にあることが大きく影響しているというのです。厚生労働省から漏れてきた情報は、まず東京や首都圏の中で口伝えで浸潤し、その後全国へ広がるのです。そのため、地方の歯医者がこれらの情報を得るには手間、暇がかかるというわけです。
今回の会合でもある教授が酒の勢いも手伝ってか、かなり激しい口調で言われていたのが印象的でした。
「今まで僕は関西で生まれ育ち、歯医者になったのでわかりませんでしたが、教授になって東京方面へ出張するようになってよくわかりました。歯科を含めた医療の情報は東京に行かないとわからない。箱根の山を越えては伝わらないものなのですよ!」
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