2007年06月01日(金) |
ごまかしは利きませんよ! |
昨日、僕は母校であり学校歯科医をしている地元小学校へ歯科検診に出かけました。 皆さんも記憶のどこかに残っているとは思うのですが、学校の健康診断はいつも4月、5月、6月の時期に行われます。どうしてこの時期に学校の健康診断が行われるかご存知でしょうか? 学校の生徒の健康管理について定めた法律に学校保健法という法律があります。この学校保健法により定められた学校保健法施行規則というものがあるのですが、その第三条に、
“健康診断は、毎学年、六月三十日までに行なうものとする” という条文があります。 すなわち、毎年6月30日までに全国の幼稚園、小学校、中学校、高校では、園児、児童、生徒たちに健康診断を受けさせないといけない義務があるのです。歯科検診もそんな健康診断の一つなのです。
今年の歯科検診は無事に終了したわけですが、全体的な感想としては、歯が悪い子供は少ないなあというのが実感です。特に、むし歯が目立たなくなってきました。かれこれ僕は10年近く地元小学校の歯科検診を行っていますが、10年一昔とはいえ、10年前と比べても生徒たちのむし歯の数は減少してきています。
このことは地元小学校の話だけではありません。同世代の全ての小学校生徒についてもいえることです。 先日もここで取り上げた歯科疾患実態調査には、12歳児における永久歯のむし歯経験歯数という調査項目があります。12歳児ということは小学校6年生ということですが、小学校6年生という年齢はおおよそ乳歯から永久歯に生え代わりが終了した頃です。もちろん、個人差はあるわけですが、僕が今回検診した6年生の生徒たちもほぼ全員が永久歯に生え変わっておりました。その12歳児のむし歯、ならびにむし歯を治療したり、最近ではほとんどないのですが、むし歯を抜歯した歯が何本あるか調べたのがむし歯経験歯数なのです。
昭和62年 4.9本 平成5年 3.6本 平成11年 2.4本 平成17年 1.7本
むし歯の数が確実に減少してきていることが歯科疾患実態調査でも数字になって明らかになっているのがよくおわかりだと思います。
ところで、今回の歯科検診では興味深いことがありました。歯科検診では歯の歯垢のつき具合、歯肉の炎症の状態を調べる項目があるのですが、昨年の検診では歯垢が付着している生徒が多く、養護教諭の先生に指摘、歯磨き指導を念入りに行うようにしました。 今年の検診ではどうだったといいますと、歯垢がついている生徒が激減したのです。
“これは良い傾向だなあ”と思いつつ、何となく腑に落ちないものを感じました。 そこで、僕は養護の先生に尋ねてみました。
「歯科検診前に生徒たちに歯磨きをさせませんでしたか?」
養護教諭の先生は苦笑いを浮かべながら答えました。
「先生、わかりましたか?」
普段から歯を磨いているか、普段はそれほどでもないのに治療の直前に念入りに磨いているかどうかは簡単に区別がつくものです。それは歯肉の状態を診ればわかります。 歯を磨けば歯に付着していた汚れは取り除くことができるのですが、一方で歯肉の炎症は普段の適切な歯磨きを行わないと治まりません。すなわち、普段いい加減に磨いていている人の場合、検診や治療の直前に磨いたとしても歯肉の炎症は残っているものなのです。その証拠に歯肉の一部から出血の痕や歯ブラシによる擦過傷が見られるのです。
このあたりは歯医者であれば全てお見通しといったところでしょうか。ごまかしは効かないものなのです。
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