2007年05月29日(火) |
歯と歯の間を磨きましょう! |
厚生労働省は6年に1度、国民の歯や口の中の健康を調査する歯科疾患実態調査を行っています。最近では昨年、平成17年に歯科疾患実態調査が行われたのですが、その結果を見ていると、ほぼ現時点での日本国民の歯の健康状態の実態を見る事ができます。
この歯科疾患実態調査の調査項目の中で“歯ブラシの使用状況”というのがあります。これは、歯ブラシの使用状況を一日何回磨くかという観点から調べたもので、みがかない者、ときどきみがく者、毎日1回みがく者、毎日2回みがく者、毎日3回以上みがく者に分けて調べています。 平成17年においては、
みがかない者 1.4% ときどきみがく者 2.5% 毎日1回みがく者 25.7% 毎日2回みがく者 49.4% 毎日3回以上みがく者 21.1%
となっています。過去の歯科疾患実態調査と比べ、一日に歯を磨く回数は年を追うごとに増えているのが特徴で、毎日3回以上みがく者の割合が増えています。 今回の歯科疾患実態調査調査では、歯を全く磨かない人はわずか1.4%であり、日本人のほぼ全員が歯を磨く習慣を持っていることがわかります。
その一方、むし歯に罹っている人の数はといいますと、20歳代まではむし歯の数は減少しているものの、30歳代以上となるとさほど減少しておりません。歯周病にいたっては、5歳〜9歳の年代で既に40%以上が歯周病に罹っており、20歳代で80%、50歳代にいたっては90%が歯周病になっているのです。 以前に比べれば、むし歯を持っている人の数は減少してきていますし、歯周病の人の割合もわずかながら軽症傾向にあるのですが、依然としてむし歯、歯周病は国民の大半が罹患している現実。国民病ともいえる疾患なのです。
むし歯や歯周病の予防で最も有効な手段が歯磨きであることは多くの人が知っているところではあるのですが、それにしてもほとんどの国民に歯磨き習慣が定着している一方、むし歯や歯周病が蔓延したままということは、歯磨きの方法に改善すべきところがあることは、否定できない事実だと思います。自分ではしっかりと歯磨きをしているつもりでも、我々専門家からすれば上手く磨けていないケースが多いのです。
中でも僕が気になるのは、歯と歯の間の歯磨きです。歯と歯の間の歯磨きは通常の歯ブラシだけでは上手く磨けません。歯ブラシの毛先が歯と歯の間に上手く届かないことが原因であるのですが、むし歯や歯周病に罹っている患者さんの状態を診ていると、どうも歯と歯の間に食べかすや歯垢が溜まり、うまく取り除けていないケースがほとんどです。これは歯ブラシだけでなく、普段から歯と歯の間をお掃除する糸ようじ、デンタルフロス、歯間ブラシといった歯間部清掃用具を使わないと除去できないのです。
かつて、某歯科医師会が調査したデータによれば、歯ブラシだけを使用した場合、口の中の歯の69%の歯垢を除去できたのに比べ、歯ブラシと歯と歯の間の掃除ができる歯間部清掃用具を併用した場合、95%の歯垢が除去できているのです。
恥ずかしいながら、僕自身、某歯科大学の学生時代、歯磨き時、歯肉から血が出ていた時期がありました。また、時折口臭があったようで、周囲からは時折、“口から臭うよ”と指摘されたこともしばしばでした。僕は一日3回磨いていたのですが、しっかりと磨いていたつもりなのにどうして歯肉から血が出たり、口臭がするのかわかりませんでした。中でも口臭は自分では自覚しにくいものであるために、口臭を指摘されると非常に精神的なストレスを感じたものです。 この事態が一変したのが、歯と歯の間の掃除でした。ある先輩から歯と歯の間の清掃の大切さを聞かされた僕は早速自分でも歯間ブラシを使用して歯を磨いてみました。清掃した歯間ブラシを見てみると、歯間ブラシの毛の間には自分でも驚くほどのべっとりとした歯垢がたまっていたのです。べっとりと歯間ブラシについた歯垢を臭ってみると、腐敗臭がしました。これが口臭の原因かもしれない。僕は毎日欠かさず歯と歯の間の掃除を行うようにしたのです。 するとどうでしょう。わずか2週間ぐらいで歯磨き時の歯肉からの出血が無くなってきたのです。また、長期間悩んでいた口臭も指摘されなくなりました。自分でしっかりと磨いていたつもりでも、実は歯と歯の間の掃除はできていなかったのです。
僕の苦い経験から、患者さんには常に歯と歯の間の掃除を行うように伝えているつもりです。実際のところは、何度も言葉を変え、やり方を変えながら歯と歯の間の掃除の大切さを指摘しています。全ての患者さんが歯と歯の間の掃除を習慣づけられているとは思いませんが、少ないながらも一定数の患者さんには歯と歯の掃除が習慣化されつつあるように思います。
厚生労働省では2000(平成12)年から10年間、日本人の健康寿命を伸ばす目標として“健康日本21”を発表しています。この“健康日本21”の中に歯の健康目標があるのですが、歯の健康目標には
40歳、50歳における歯間部清掃用具を使用している者の割合をそれぞれ550%以上にする
というものがあります。現状では、歯間ブラシや糸ようじ、デンタルフロスといった歯間部清掃用具を使用している人の割合は、40歳代以上では30%に過ぎません。現時点では、厚生労働省の目標とは隔たりがあると言わざるをえません。
今週後半は6月。6月には6月4日を中心に歯の衛生週間が始まります。皆さんも、この際、歯と歯の間の掃除を習慣化するようにしてもらいたいものです。 実際に歯と歯の間の掃除方法については、人それぞれの口の中の状態が異なります。是非ともお近くの歯医者さんを受診し、専門家にあなたにあった歯と歯の間の掃除を指導を受けて欲しいと思います。
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