歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2007年04月19日(木) 週一回の刺激を得られる日

昨年から僕は某専門学校で半年間、非常勤講師としてある科目の講義を受け持っています。講義は4月から夏休みを挟み6ヶ月間。毎週水曜日が僕は学生たちに講義をすることになっています。

この仕事、一昨年までは親父が長年していた仕事でした。親父はこの仕事のため、週の真ん中である水曜日を休診日とし、時間を空けていたのです。高齢になった親父から昨年、僕が親父の職を引き継ぎ、講義を担当しているというわけです。

僕はかねてから不思議に思っていました。某専門学校で非常勤講師として受け取ることができる給料はそれほど高いものではありません。正直言って、休診せず、自分の歯科医院で患者さんを治療している方がずっと実入りはいいのです。それにも関わらず、ずっと親父は自分の歯科医院を休診してまで講義を続けてきました。その理由が僕にはわかりませんでした。
親父に尋ねても
「そのうちにわかるよ。」

初めて講義を担当した昨年、僕は必死でした。何を講義すればいいのか試行錯誤を繰り返し、四苦八苦しながら講義の準備をし、講義をしたものです。
正直言って、大変なことを引き受けてしまったものだと後悔していたところもあったのです。
それに比べ、今年は去年講義を担当した経験があります。講義の準備も去年作り上げた資料があります。一度作り上げたものを再確認しながら、今年用の講義を準備する。ゼロから始めた昨年とは異なり、下地がある今年の講義の準備は多少は楽になったように思います。

そんな余裕があるせいでしょうか?僕はあることに気がつきました。
それは、講義を担当することで、ともすれば自分が見失っていた知的好奇心が呼び覚まされるような感覚が生じてきたことです。

普段、歯医者の仕事をしていると、これはこれなりに日々新しい発見の連続ではありますが、普段の仕事とは全く異なる仕事である講義を担当するには、毎度きちんと専門書を読み、資料を作成し、講義の準備をしなければなりません。
僕が担当する科目は、どちらかというと生命科学の分野というよりも社会科学の分野の一つともいえる科目であり、法律の改正や国の政策の変更により教科書に書かれてある内容が微妙に変化をします。もし、科目の内容の変更に気がつかず、説明してしまうと、学生は誤解したまま僕が説明をしたことを覚えこんでしまうリスクが生じます。それを避けるために僕は念入りに下調べをする必要があるわけですが、この下調べが今年は実に楽しく感じられると思うのです。
昨年、必死で理解しようとしていた項目の理解が更に進み、さらなる内容を追求したいという気持ちが強くなってきたように思いますし、新たな変更、発見に新鮮な驚きを感じたりもします。ともすると惰性になってしまう日々の生活に適度な刺激が与えられる。知的な潤いを与えてくれるようにさえ思うのです。

表面上の給料の額は安い方ではあります。仕事の合間に講義の準備をすることは、結構きつい仕事であることは確かです。普段から教壇に立っている教職の方ならいいのかもしれませんが、何せ普段は患者さんの口の中を触っている身です。学生にきちんと講義しないといけないという精神的なプレッシャーは相当なものがあります。

それでも、講義を重ねるごとに、この講義が学生のためだけでなく、自分のためだと思えるようになってきたと感じる今日この頃。

親父の一言
「そのうちにわかるよ」の意味が少しは理解できるようになってきたと感じる、歯医者そうさんです。


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