歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2007年04月09日(月) たかがゴミ、されどゴミ

今日は週明けの月曜日。一週間の始まりということで、皆さんの家庭では、朝からいろいろと忙しい時間をお過ごしではないでしょうか?
家事に勤しまれている方にとっては、家庭から出るゴミの処理も何かと気を遣われることではないかと思います。ゴミ出しも大切な家事の一つであり、特に週明けには週末に溜まったゴミを出さなければいけませんからね。

皆さんのお住まいのところでも、ゴミの分別収集は当たり前のようにされているのではないでしょうか?以前であれば可燃物と不燃物といった大まかな分別によるゴミ収集だったのが、可燃物、かん、びん、紙や布、ペットボトル、小型不燃ゴミといった分別収集が進められています。
電化製品などでは法律によりエアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、パソコンといったものは市町村では収集せず、購入店や買い替え店などで出さないといけないようになっています。
消火器、プロパン、バッテリーといった危険物、タイヤやバイクといった処理不適物なども専門の収集業者に委託するか、市町村が経営するゴミ処理センターなどで直接持ち込まないと処理できなくなっています。
しかも、多くの市町村ではゴミの収集袋は市町村が指定する収集袋で、中身が見える透明、もしくは半透明のものになってきています。以前のような黒や青のナイロン袋が使えなくなってきていますね。

僕が住んでいる市では、この4月からゴミの分別収集の方法が一部変更になりました。分別項目に新しくプラスチック類という項目ができたのです。
食料品や日用品のナイロン袋やマヨネーズのチューブ、発泡スチロール、食料品のカップやパック、プラスチックトレイなどを分別してゴミ出しをしないといけないようになったのです。
先月末から、うちの歯科医院にパートの来られている主婦のアシスタントの間ではこの話題で持ちきり。何がプラスチックで何がそうでないかということをしきりに情報交換しておられていましたね。我が家でもプラスチック類を専用に収集するボックスを作り、その中にまとめて集めるようにしていますが、嫁さんやお袋などは、
「慣れるまで面倒ね」なんてことを口々に言っていました

家庭ゴミに関しては分別収集が当たり前になっていますが、医療機関ではどうなっているでしょう?

廃棄物に関しては、法律で厳密に処理方法について定められています。
廃棄物の処理および清掃に関する法律(以下、廃棄物処理法)という法律です。廃棄物処理法では、一般廃棄物と産業廃棄物に別れています。一般廃棄物とは一般家庭ゴミのことを指し、産業廃棄物とは事業所や工場といった職場から出されるゴミのことを総称していいます。

医療機関から出される廃棄物は、概ね産業廃棄物として扱われます。
医療機関で出される廃棄物で特に問題があるのは、感染性や毒性のある廃棄物が排出されることでしょう。医療においては血液や汚物などの付着した様々な廃棄物がたくさん出されるもの。これらを一般廃棄物として一般ゴミとして処理することはできません。そのため、医療機関では廃棄物を事前に分別して処理をすることになります。
例えば、血液や体液のついたガーゼや綿花、グローブなどと注射針やメスの替え刃、カテーテル類などは別々に分別しないといけません。
うちの歯科医院では、ガーゼやグローブなどはこのような箱に一括してまとめています。




一方、注射針やメスの替え刃、注射用のアンプル、カートリッジなどは下のような箱にまとめています。鋭利なものばかりですから、丈夫なプラスチック製の容器を回収容器としています。




歯科医院で発生する廃棄物の中で、石膏類は下のような袋にまとめ、専門の業者に委託して処理をしてもらいます。




うちの歯科医院では現在、デジタルレントゲン装置を使用していますので関係はないのですが、通常のレントゲン装置を使用しているような歯科医院であれば、レントゲン現像液の廃液として現像液や定着液が必ず排出されます。これらは産業廃棄物として、それぞれの廃液入れに溜めておき、専門の処理業者に委託して処理されます。

抜歯した歯や粘膜などの病理廃棄物も感染性廃棄物として扱います。これらも特別な容器に保存して専門業者に委託して処理してもらうことになります。

他の医療機関と異なり、歯科医院では、患者さんから収集した詰め物や被せ歯の金属の処理が問題となります。これも別途回収箱に集めて、専門業者に委託処理することになります。




廃棄物処理業者は歯科医院で発生する詰め物や被せ歯の収集には非常に熱心です。なぜなら、詰め物や被せ歯には金、銀、パラジウム、銅といった貴金属が含まれているからです。昨今の金属需要の増加からこれら詰め物や被せ歯に含まれる金属も非常に貴重です。廃棄物処理業者は、歯科医院に対して詰め物や被せ歯を回収すると、貴金属を分析、分離します。得られた貴金属はどうするかといいますと、貴金属市場で売りに出しているのです。すなわち、廃棄物処理業者は歯科医院で回収できる詰め物や被せ歯をリサイクルすることによりかなりの収益をあげているはずです。昨今の金属需要の高まりから貴金属類の価格の高騰が続いています。それ故、廃棄物処理業者は以前にもまして被せ歯や詰め物の収集に熱心に取り組んでいると言えるでしょう。

それでは、医療行為によって発生するゴミではない紙くずなどの処理はどうでしょう?紙くずであっとしても、医療機関から出されるゴミは事業所のゴミとして一般ゴミと一緒に捨てることができません。これも専門の業者に委託して処理することになります。
しかも、医療機関で発生する紙くずの中には患者さんの個人情報が書かれた様々な書類が含まれていますから、これらはシュレッターなどを利用して個人情報が特定されないようにしてから処理する必要があります。
うちの歯科医院では、シュレッターを使用して紙くずから個人情報が特定されないようにして処理をしています。





話を元に戻しまして、うちの市で行われるプラスチック類の分別収集ですが、嫁さんの話では、プラスチックゴミを分別することで、家庭から出される一般ゴミの量が確かに減ったらしいのです。
地元市の担当者の話では、プラスチック類のゴミは容積比で約37%を占めているのだとか。このプラスチックを分別収集することで、プラスチック類がリサイクルにまわされ、資源化を促進するとのこと。また、焼却炉の延命や二酸化炭素排出削減による環境への付加の低減を図れるそうです。

環境に気を遣わなければならない時代になっていますが、ゴミの分別排出、収集はまさにその一歩と言えるかもしれません。たかがゴミ、されどゴミといったところでしょうね。


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