歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2007年04月04日(水) 冒険と挑戦とは違う

先週のある夜、僕は地元歯科医師会の御大の先生Y先生から食事の招待を受け、出かけてきました。
1月から2月にかけY先生が地元市民向けの公開講座の講師をされたのですが、その際、僕は講座の準備を手伝ったのです。公開講座の終了後、お礼の代わりに食事に行こうと声を掛けられていたのです。

Y先生は地元歯科医師会では会長よりも年上の大先輩。そんな先輩に対し最初は緊張気味でしたが、アルコールも少し入りだすとそんな緊張も解けはじめ、和やかな雰囲気で話が弾みました。日頃の診療の話Y先生の開業時のことや地元歯科医師会の裏話など、あっという間に時間が過ぎていきました。
食事会も佳境に入った時、Y先生はこんなことを言われたのです。

「いつも僕はね、若い先生にアドバイスを求められた時に言う言葉があるんだよ。
『冒険はするな、挑戦はしろ』とね。」

「冒険というのは自分の未知なる世界に足を踏み入れるということだよな。自分が何も知識も経験もない中で探っていくという意味合いがある。どこか未知なる世界を旅するという意味においてはいいのかもしれないが、歯医者の世界においてはやってはいけないことだよ。なぜなら、歯医者稼業は確かな知識と自分が持っている技術、経験なしでは何もできないからね。自分が持っていない知識、技術、経験なしでいきなり新しい治療を行うということは、これはまさしく冒険だよ。冒険は歯医者にとっては有意義なように見えるかもしれないが、患者さんにとっては甚だ迷惑な話に過ぎない。これでは何のために患者さんの治療を行っているかわからんよ。」

「それに対して、挑戦というのは、自分が今まで築き上げてきた知識、技術、経験を元に新しい知識、技術、経験を積もうとすることだよ。挑戦するためには、常日頃から専門書や文献を読み、多くの歯医者の同士と交流しながら情報交換し、時には教えを受け、自分でじっくりと想像しながら、満を持して行うことだ。上手くいけば、それで自分新たな武器となるし、上手くいかなかったとしても何が悪かったのかフィードバックすることで新たな挑戦の足がかりとなる。」

「僕はこれまで常に挑戦をしてきた。今回、そうさん先生に手伝ってもらった市民向けの公開講座も僕の新たな挑戦であったわけだ。これまで何度か市民向けの公開講座の講師として仕事をしたことがあったけど、今回、初めてパソコンを使用して資料を作り、パソコンを使って市民に講義をした。これまでの僕なら考えられなったことだけども、そうさん先生のおかげで、新しい方法を模索し、無事終えることができた。今年で僕は70歳になるのだけど、70歳になってもこうやって挑戦することができた。僕は幸せ者だと思うよ。」

「『冒険と挑戦とは違う』。そうさん先生はわかっているとは思うけど、これからまだまだやるべきことがたくさんあるはず。決して冒険はするな。けれども、挑戦はたくさんするんだよ。」

含蓄のあるY先生のお言葉。何十年も患者さんの治療をし続けてきた大ベテランの先生ならではの含蓄のあるお言葉。

いつまでも挑戦し続けるY先生を目標に、いつまでも挑戦し続ける歯医者でいたいと感じた、歯医者そうさんでした。


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