歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2007年03月30日(金) 彼女いるの?

「そうさん、彼女いるの?」

僕が某歯科大学の学生時代、先輩の一人であったWさんにちょくちょく言われた一言です。Wさんは当時の僕がうぶに見えたようで、
“男であれば彼女の一人くらい作らないとだめだ!”ということを人生の先輩として言いたかったようです。
一時期、僕はWさんに会うたびに

「彼女いるの?」
と言われたものです。

実際のところ、僕には彼女がいたのですが、Wさんには黙っていました。理由は簡単です。彼女のことを言えば、今度は根掘り葉掘り彼女のことを訊かれるのが目にみえたからです。確かにWさんには世話になっていたことはありましたが、僕が悩みを打ち明け、相談できるような先輩ではありませんでした。僕はいつもWさんの問いかけに

「そうですねえ・・・」
と笑いながら答えなかったのです。質問にはっきりと答えない僕に、Wさんは執拗に

「彼女いるの?」
と問いかけてきました。最初のうちは適当に流しているつもりでも、何度も言われ続けられるとうっとおしくなるもの。

「いい加減にして下さい」
と何度口から出かかったかわかりませんが、先輩ということでひたすら忍の一字で堪えていました。

この手のプライベートなことに関する余計な質問は、誰もが一度や二度は経験したことがあるのではないでしょうか?一見すると心配しているというようなニュアンスを込めながらも、実のところは相手の気持ちを土足で踏みにじるような失礼な質問だと思うのです。
僕自身、これまでもWさん以外に何人かの人から何度と無く言われたものです。

結婚をするまでは
「そうさん、結婚しないの?」

結婚してからは
「そうさん、子供はどうなの?」

一人目の子供ができてからは
「二人目の子供はどうなの?」

さすがに二人の子供ができてからは子供を作る作らないということは言われなくなりましたが、今度は

「子供はどこの幼稚園に行くの?」
「小学校はどこの小学校に行くの?」
など言われる始末。その都度、適当に答えてはいるのですが、そんなに僕のプライベートのことを知りたいかと思いたくなります。

おそらく、今後も尋ねられることでしょう。

「子供はどこの中学校へ行くの?」
「子供はどこの高校へ行ったの?」
「大学は、家が歯医者だからどこかの歯科大学へ行くのでしょうね?」

子供が適齢期になれば、再び

「お相手はいらっしゃるの?」
とか
「結婚の予定は?」
なんて訊かれるのでしょう。
子供が結婚すれば、結婚したらで
「子供さんの奥さんとはうまくやっているの?」
というような嫁姑問題的なところまでふっかけてくるかもしれません。

考えるだけで、うっとおしいたらありゃしない!


ところで、冒頭に先輩のWさんですが、先日、街中で久しぶりにWさんと出くわしたからです。伝え聞いた話で、僕はWさんがまだ独身であることを知っていました。Wさんは今年47歳。失礼だとは思いながらも訊いてみました。

「学生時代、僕に『彼女いるの?』って言われていたでしょ。僕は今、結婚して子供も二人できましたよ。あの時の答えがやっとできたように思うのですけど、今度は僕が尋ねる番です。Wさん、彼女はいるんですか?」

Wさんは
“またか?”というような表情をしながら

「もう何度も周囲から聞かれたことだよ。僕はもういいんだ。彼女がいなくても。」

きっと、Wさんは人がうっとおしがる、嫌がることを尋ねるものではないということを肌で感じたことでしょう。ちょっとしたリベンジをした感がした、歯医者そうさんでした。


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