歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2007年03月29日(木) 患者が長時間待つのは当然のこと

春分の日を境に暖かさが増してように感じる当地。今年の冬は暖冬ではありましたが、3月に寒の戻りみたいな時期があったせいか、いつもの年と同じような待ち遠しい春を迎えたような気がします。
気候の変わり目と合わせたわけではないでしょうが、うちの歯科医院では3月に入ってから患者さんの来院が相次いでいます。予約帳を確認するとかなり先まで予約の患者さんで詰まっている状況。少し前では考えられなかった状況です。
歯医者も現金なもので、患者さんが多いとモチベーションが上がるような気がします。これまでも決して手を抜いていたわけではありませんが、多くの患者さんに来て頂けるという有難さをかみ締めながら仕事ができる喜びを感じる今日この頃・・・

と言いたいところですが、患者さんが増えると困った問題も出てきます。中でも頭の痛い問題が急患の扱いです。

“歯が痛くて我慢できない”
“親知らずの周囲が腫れて口が開かない”
“前の差し歯が取れた”
“入れ歯が割れて食事ができない”

などなど、直ぐにでも処置を行わないといけない患者さんが来院するのです。事前に電話で連絡がある場合、何とか予約の患者さんの時間を考えながら時間を指定して来院してもらうことが可能なのですが、問題は、業界で“飛び込み”と呼ばれる予約無しで来院される急患の扱いです。
“飛び込み“患者さんも大切な患者さんではあるのですが、予約制を敷いているうちの歯科医院では、予約患者さんを優先的に治療せざるをえません。だからと言っていつまでも待たせるわけにもいかず、結局のところ、予約の患者さんの合間をぬって治療をすることになります。
そうするとどうなるか?結果的に予約患者さんの予約時間が押してしまう結果とならざるをえないのです。

歯科の治療の場合、他の内科、外科の外来診療とは異なり、診察だけではなく必ず処置が伴います。処置が簡単に済むような場合であればいいのですが、中にはどうしても時間をかけざるをえない治療もあります。
しかも、“飛び込み”患者さんはぎりぎりまで我慢をした挙句駆け込んでこられる場合が多いのが特徴です。ぎりぎりまで我慢するような状態の場合、症状がかなり進み、治療をするにも時間を要するようなケースが多いのです。“今日は応急処置だけにしておきましょう”と言いたいところが、その応急処置に手間取ってしまうこともしばしばです。
そのため、せっかく貴重な時間を調整して来院してもらった予約患者さんにしわ寄せが来てしまいます。
この悩み、うちの歯科医院だけではなく、多くの歯科医院でも同様の悩みがあり、同業者と話をしていると、皆その対策に頭を悩ませているようです。これと言った妙案がないのが現状なのですね。

そのため、最近の僕は、
「長い間待たせて申し訳ありません」
と口癖のように言ってから治療を始めるようなケースが多いように思います。患者さんの中には、明らかに不機嫌な表情をされたり、受付で苦情を言われるような方もいるようですが、こちらとしては事情を説明して、平謝りです。

先週、1時間近く待たせてしまった患者Kさんがいました。その日も“飛び込み”患者さんが相次いで来院した日で、こちらとしては対応に四苦八苦、てんてこ舞いだったのです。
やっとの思いでKさんの治療に辿りついた感がありました。僕はKさんに治療が大変遅くなったことを詫びたのですが、Kさんはにっこりとしながら

「治療のために患者が長時間待つのは当然のことですよ。先生が謝ることはないです。」
と言って下さいました。

ちょっとした言葉ではあるのですが、迷惑をかけている患者さんからこのようなことを言われると、恐縮してしまいます。
ただただKさんの温かいこころざしに頭が下がる思いがした、歯医者そうさんでした。


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