2007年03月28日(水) |
医療機関の領収書に収入印紙が貼っていない理由 |
うちの歯科医院は大半の患者さんが保険診療での治療をしているのですが、中には保険診療では無い自費治療を選択される方がいらっしゃいます。審美治療を行う場合や一部の入れ歯を作る場合が該当します。昨日も審美治療の一環で前をセラミックで覆ったメタルボンド冠と呼ばれる被せ歯をセットした患者さんがいました。メタルボンド冠の出来具合に患者さんも満足されたのですが、受付でちょっとした問題がおきました。それは支払いに関する領収書に関するものでした。
現在、医療機関では治療費に関する領収書を発行しなければなりません。うちの歯科医院でも領収書を発行していますが、これは保険診療、自費診療の区別は関係なく発行しています。 今回のメタルボンド冠をセットした患者さんに対しても領収書を発行し、手渡したのですが、その領収書を見て患者さんが質問をしてきたのです。 その質問とは、
“高額な治療費にも関わらず収入印紙が貼っていないのはどうしてか?” というものでした。
メタルボンド冠の値段は各歯科医院で値段設定が異なります。歯科医院が自由に値段設定することができるのですが、概ね5万円〜15万円くらいの範囲です。かなりの幅がありますが、都会部であればあるほど値段設定が高い傾向にあります。これは都会部の物価が地方に比べ高いという事情が影響していると思われます。 それはともかく、うちの歯科医院でのメタルボンド冠の値段もこの範囲に入っています。通常の保険診療の治療費に比べかなり高額であることが言えるでしょう。それにも関わらず、収入印紙を貼っていない領収書を発行するのは何か理由があるのか?もしかしたら、印紙代をけちっているのではないか?そんな疑いを患者さんは持たれていたようです。
実際のところ、歯科治療における高額治療ということになると、保険診療よりも自費診療が多いと思います。特に、矯正治療やインプラント手術などの場合はかなりの高額になるはずです。そうした高額の治療費がかかったにも関わらず、領収書に収入印紙が貼っていないのはおかしいではないかと問われる患者さんが少なからずいるという話を同業者から耳にします。
実は、印紙について印紙税法という法律で定められています。この印紙税法の中に医療費についてはどう扱われているのでしょう?印紙税法第5条にはこのような記述があります。
別表第1の課税物件の欄に掲げる文書のうち、次に掲げるものには、印紙税を課さない。 1 別表第1の非課税物件の欄に掲げる文書
別表第1の非課税物件の欄を見てみると、2のところに下のような記述があります。 2 営業に関しない受取書
営業に関しない受取書の具体的内容については、印紙税法通達に述べられています。この印紙税法通達の第17号文書の25に次のような規定があります。
25.医師、歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士、保健師、助産師、看護師、あん摩・マッサージ・指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、獣医師等がその業務上作成する受取書は、営業に関しない受取書として取り扱う。
印紙税法と印紙税法通達から医療機関で出される受取書、すなわち、治療費に関する領収書は印紙税の対象とならない非課税扱いになるのです。そのため、いくら高額の医療費の領収書であったとしても法的に印紙を貼る必要がないということになるわけです。
今回の患者さんにはこのことを十分に説明し、納得してもらいました。決して無断で領収書に収入印紙を貼っていないわけではなく、法律に基づいて貼っていないという事実を伝えました。
読者の皆さんの中にも医療機関が発行する領収書に収入印紙が貼っていないことを不思議に思っておられている方がいたかもしれません。今日は、その理由を是非知ってもらいたいと思い、日記に取り上げた次第です。
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