2007年03月27日(火) |
コーラが歯や体に悪い理由 |
日頃、患者さんの歯の治療をしているといろいろなことがわかってくるものです。 中でも強く感じることは、歯医者が目の前に見えるむし歯、歯周病を治療するだけでは意味がないということです。むし歯や歯周病になった過程を考えれば、単に歯磨きが足りないだけでは言い切れないところがあります。むしろ、患者さんの日常の生活がむし歯や歯周病を引き起こすのに大きなウェートを占めているように思えます。 そういった意味で患者さんと何気ない話をしながら、患者さんの日常の生活習慣を垣間見ることは、歯医者にとって非常に大切なことと言えます。
うちの歯科医院に通い続けている患者さんの一人にYさんがいます。正直言って、Yさんの口の中の状態は決して芳しいものとは言えません。たくさんの治療箇所があるのですが、治療をすればするほど、治療しなくてはいけない場所が増えているような感覚に捉われる ことがあるのです。ある歯の治療が終わったと思いきや、別の場所の歯がむし歯ができたり、詰め物が取れたり、歯が揺れてきたり、入れ歯が割れたり等々、歯の悪化のスピードに治療のスピードが追いつかないのです。 時折、Yさんは
「いつになったらわしの歯の治療は終わるのでしょう?」 と言われる始末。
ある日のこと、僕はYさんに一日の食事のことを何気なく尋ねてみました。するとYさんはこんなことを漏らしたのです。
「先生、わしは、寝る前にコーラを飲むのが好きなんですわ。」
清涼飲料水、炭酸飲料水の代表のようなコーラ。テレビのコマーシャルを見ていると、コーラを飲むことが人生の至福の時と言わんばかりの演出のものばかり。コーラの製造、販売会社は多額の宣伝費を投入しているようですが、それだけ多額の宣伝費を投資しても元は取れるくらい、コーラは今でも売れ続けているのでしょう。
このコーラですが、歯の健康を考えると、あまり勧められた飲み物ではありません。
以前にも書いたことですが、コーラにはどれくらいの砂糖が含まれているか ご存知ですか? コーラ350ccの中には砂糖が38.5グラム含まれているというデータがあります。これだけではもう一つピンときにくいですから角砂糖で換算してみましょう。角砂糖1個には砂糖4グラムが含まれています。ということは、コーラ350ccの中にほぼ角砂糖10個分の砂糖が含まれているということになります。 皆さんはコーヒーを飲まれる際、角砂糖は何個ぐらい入れられるでしょう?想像してみて下さい。10個も入れることはあるでしょうか?おそらく角砂糖10個を入れてコーヒーを飲まれる方はほとんどいないはずです。コーヒーではできないことをコーラでは平気でできてしまう。これは、コーラが常に冷やされていること、炭酸飲料であることが影響しています。人間の味覚というもの、飲み物の温度が冷えると味覚が鈍るのです。また、炭酸であることから味覚は炭酸の刺激によりより味覚が麻痺する。そうしたことから、多くの人は過剰な砂糖が入っているコーラを平気で飲むことができるのです。
もう一つ忘れてはいけないことは、コーラは強酸であるという事実です。コーラのpHをご存知でしょうか?開封直後のコーラのpHは2.5〜3.0程度ということが言われています。コーラは炭酸飲料の代表選手みたいな飲み物です。炭酸というくらいですからpHは酸性であることは誰でも容易に想像できると思いますが、酸性といっても強酸といえるpHであることを知っている人はまだまだ少数派ではないでしょうか。 幸い、人間の口の中は唾液があり、強酸の飲料水が口の中に入っても唾液によって緩衝され、pHが中性の方向へ調整されるので体にダメージが残ることは少ないのですが、飲み方によっては歯が酸によって溶けてしまう現象がおきてしまいます。
Yさんに質問をしてみると、コーラを一気に飲み込まず、口の中で溜め込んでから飲むという飲み方なのだとか。 Yさんのむし歯の中には、歯が酸で解けているようなむし歯があるなあとは感じていたのですが、その理由も寝る前のコーラに一因があることが想像できました。
早速、僕はYさんに寝る前のコーラを控えることを提案しました。単に歯の問題だけではなく、体にとってもよくありません。実際のところ、Yさんは糖尿病も抱えているのです。
Yさん曰く 「寝る前のコーラというのは、一日最後の楽しみなんですわ。コーラは止められませんわ。」
機会をみてはYさんに寝る前のコーラを諦めてもらうよう説得するつもりですが、Yさんが僕の申し出を聞き入れてくれるには難しいかもしれません。頭の痛い問題です。
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