歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2007年03月23日(金) 一肌脱いでやるか!

先週のある日の夜のことでした。仕事を終え、食事をしていると一本の電話がかかってきました。電話をかけてきたのは僕の出身歯科大学の現役学生からでした。その学生は僕がよく知っている学生であったのですが、相談事があるということで僕に電話を掛けてきたのです。相談事の詳細を書くことはできませんが、あることで是非力になって欲しいということだったのです。電話で話をしていると、あることについての彼の思い、情熱がひしひしと伝わってきました。僕がいくつか感じた疑問に対しても彼なりの考えをしっかりと述べていました。わかるところはわかる、不明な点はわからない。自分が足らないところは素直に認めた上で、あることを実現するために是非僕の力を貸して欲しいと訴えていました。

こういうことって僕は弱いのです。はっきり言って、彼に協力をすることでお金が入ってくるような一銭の得になることはありません。むしろ、僕の方から持ち出すことが多いはずです。
しかも、普段の診療や歯科医師会の仕事があります。4月からは再び某専門学校での講義も始まります。僕には嫁さんや二人のチビがいますから、仕事の合間に家庭サービスの時間も確保しないといけません。
普段、こちらで更新している日記はこうした時間の合間をやりくりして書いています。

以上のようなことを考えると、今でもかなり時間的な余裕が無いことはわかりきっています。彼の申し出を受け入れ協力をするということは僕にとって首を絞めるようなことにもなりかねません。それなのに彼に協力することを受け入れたのは、純粋に後輩の情熱を支えてやりたいという思いからでした。彼の申し出がいい加減なことであれば僕はその場で断っていたことでしょう。けれども、彼の申し出が彼の純粋な気持ちから発したものであること、是非とも実現したいという強い思いに僕は思わず心を動かされてしまったのです。

僕にも彼と同様の経験がありました。
僕が学生時代、あることで先輩の先生の協力を仰がなければならなくなり、僕は何人もの先輩の先生の所へ電話をかけました。ところが、電話をかけてもかけても僕の申し出を断る先輩が続出。

「わしは忙しいからそんなことを協力する暇がない。」
「そうさんの気持ちはよくわかるけど、今うちは家庭のことで大変だから協力できない。」
「電話でお願いするとはけしからん。ちゃんとうちの家に挨拶に来い!」

このように発言されるのならまだましな方で、中には僕からの電話を取り次ごうともしない先輩のお宅や無言で電話を切られる先輩がいたのです。
僕も断られ続けると気持ちが落ち込んできました。僕の力では先輩に協力してもらうのは無理ではないか?わらをもつかむ思いである先輩の所へ電話をかけてみると、その先輩は僕の話に真摯に耳を傾けてくれたのです。そして、僕の申し出に是非とも協力を惜しまないことを言ってくれました。
実際のところ、その先輩が最も協力してくれた先輩でありました。経験不足の後輩である僕を様々な点でサポートしてくれたのです。
あることが無事終わった後、僕はその先輩のもとへお礼に伺いました。その際、その先輩はこのようなことを語って下さいました。

「僕も今回のようなことを学生時代に経験したことがあってね。いろいろと苦しんでいた時に助け舟を出してくれた先輩がいたんだよ。本当に物心両面で助けてくれてね。そんな経験があったから、君の申し出には過去の僕のことが思い出されてね、それで協力をしたんだよ。僕の方は、はっきり言って時間のやりくりは大変だったけど、得られるものも大きかったんだよ。それは、決して金銭的な物ではないけど、金銭では得られない貴重な物だった。人の気持ちを認め、力になることで真の気持ちの交流ができたんだよ。あなたも、これから同じようなことがあるかもしれないけど、できることなら僕と同じように後輩の力になってやって欲しい。それは後輩のためでもあり、君のためでもあるんだよ。」

電話をかけてきた彼に、僕は協力する旨の返事をしたところ、非常に喜んでいたようでした。話を聴いてみると、なかなか申し出を受け入れてくれる人が現れず、半ば諦めかけていたとのこと。かつての僕と同じです。僕が恩を受けたものを今度は僕が後輩に返す番かもしれません。

いろいろと大変なことは目に見えていますが、ここは一肌脱いでやるか!


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