2007年03月16日(金) |
次なる金属泥棒のターゲットとは? |
患者さんの歯を抜歯した際、僕は患者さんに必ず抜歯した歯の処理をどうするか尋ねます。いくら抜歯した歯とはいえ、元はといえば患者さんの物。患者さんが親から授かった大切な臓器です。患者さんの意向が最優先するものだと思うからです。 患者さんが抜歯した歯を必要であると意思表示されれば、抜歯した歯は患者さんに手渡しします。
「処分して置いて下さい」 「必要ありません」 など、患者さんが不要であると言われた場合には、僕が患者さんに代わって処理をすることになります。
患者さんが不要だと言われた抜歯した歯。具体的に抜歯した歯をどう処理するかということになりますが、基本的には歯も血液が付着している感染性廃棄物として処理を行います。一般ごみとは異なった箱に集め、専門処理業者に委託処理してもらうのです。 歯が無傷であるような場合、歯はホルマリンの入った容器に保存することがあります。標本として残す場合と、削ったり、詰めたり、神経の処置の練習用として残しておくことがあります。
どこの歯医者でも共通している話だと思うのですが、抜歯した歯が差し歯、被せ歯の場合はどうでしょう?差し歯、被せ歯は歯のみならず何種類かの貴金属を含んでいます。 歯科で最もよく用いられている金属は金パラといわれている合金です。金パラの成分はJIS企画で決まっています。12%の金、20%のパラジウム、50%の銀、17%の銅、その他の金属1%という具合。 金パラは一見すると銀色ですから、銀だけで出来ていると思われがちですが、実際には金やパラジウムといった貴金属が3割も含まれている合金なのです。 それでは、抜歯した歯が金パラを用いた差し歯、被せ歯の処理方法はどうするか?これも専門の廃棄物処理業者に処理を委託するのが普通です。廃棄物処理業者は回収した差し歯、被せ歯を専用の施設で高温で溶かし、分析し、それぞれの金属ごとに回収します。回収した差し歯、被せ歯に含まれた金属分の料金は、各金属の相場に合わせ、手数料を差し引いた額が歯医者に支払われるのです。 一方、回収した各種金属は、廃棄物処理業者によって市場で売られるのです。昨今の金属高騰の折、廃棄物処理業者によって販売される各種金属はかなりの利ざやを稼いでいるものと思われます。
ところで、ここで心配なのが各地で頻発する金属泥棒事件です。各地で鉄板や銅線などの盗難が相次いでいます。昨日もこのようなニュースが流れていました。お隣の国、中国の北京オリンピックをにらんだ建設ラッシュによる影響でしょゆか、日本ではどんな金属でも高く売れるということで、これまで誰も見向きもしなかった公共物で使用されている金属でさえ、盗難にあっている始末。金属が置いてある場所ならどこでも盗んで売って設けようという輩が多い今日この頃です。 今後、金属泥棒達が歯医者が患者さんの差し歯、被せ歯を回収している事実を知れば、今後は歯医者も金属泥棒のターゲットになるかもしれません。先に書いたように、歯医者に行けば回収した貴金属を含んだ金パラの差し歯、被せ歯が保管してあるわけですから。
これまで歯医者に侵入した泥棒は受付から現金を奪うことが多かったのですが、これからは技工室や診療室内で回収した金属の差し歯、被せ歯が回収されている箱が狙われるかもしれません。もしそうなれば、歯医者にとっては戦々恐々の日々が続くのではないかと心配する今日この頃です。
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