2007年03月12日(月) |
○○病院未払い治療費回収係 |
昨今の格差社会の拡大のせいなのかわかりませんが、医療機関を受診したのにも関わらず治療費を滞納する患者さんが増え、社会問題化しています。先に報じられた全国の6割以上の病院が加入する四病院団体協議会の調査によれば、把握できた病院の未収金は、過去3年間で計426億円とのこと。1病院あたり1620万円で、公的病院は4424万円と著しく多かった。莫大な未回収治療費です。
多額の未回収治療費の背景には、患者さんの経済的な問題があります。バブル後の不況下で生活困窮者が増えたこと、高齢者の1割負担やサラリーマンの3割負担など、治療費の自己負担増が続いたこと等により治療費の不払いに拍車がかかったようです。患者別では、国民健康保険の滞納者や産科の入院・外来患者、交通事故などで救急医療を受けた患者で未払い額が多い傾向があったとのこと。しかしながら、患者さんの中には支払い能力があるのに治療費を何度も踏み倒す確信犯や、患者を入院させて行方不明になる家族など、モラル低下に伴う悪質な例も少なくないのだとか。
医師法では、患者さんが治療費が支払えないからといって医療機関が受診拒否をすることを禁じています。このため、多くの医療機関で未回収治療費がかさばる一方、どのようにこの問題を解決すべきか対応に苦慮していました。 保険診療を行っている医療機関では、昨年の診療報酬改定などで医療機関経営も厳しさを増してきています。そのため、未回収治療費への取り組みを強化せざるをえなくなってきた。 具体的には、患者さんが支払わない場合、保険者である企業の健康保険組合や国民健康保険組合の保険者である市町村などに負担金の支配を求める動きがあります。保険者が支払いに応じなければ訴訟も辞さない構えとのこと。 それだけではなく、医療機関ではクレジットカードの支払いができるようにする動き。また、治療費を支払う際、保証人をつけるような動きまであるようです。 こうなると医療機関というよりも金融機関のような感じですが、それくらい治療費の不払い、未回収の治療費が医療機関の経営に深刻な影響を与えているということなのです。
さて、先日、某病院に勤務する知人の勤務医から聞いた話に僕は思わず考え込んでしまいました。知人が勤務している病院には未払い治療費を回収する専門のスタッフがいるというのです。 知人が勤務する病院は救急医療指定医療機関ということで、毎日多数の救急患者が運び込まれてくるのですが、全ての救急患者が治療費を支払ってくれるとは限らないとのことです。 救急医療の場合、命の危機に瀕しているわけですからたとえ高額な治療費がかかっても救命処置を行わざるをえない状況があります。救急の現場は一刻一秒を争う場です。患者さんやその家族にとっても悠長に考えている余裕はなく、高額の治療費がかかると説明されても結局救命のためには仕方なく高額医療を選択せざるをえない状況があります。患者さんの状態が落ち着き、いざ治療費の支払いとなったところで、莫大な治療費の請求に驚き、支払えないというケースが後を絶たないというのです。知人が勤務する病院には、そうした患者さんを相手に治療費の回収に当たる専門の担当官がいるというのです。仮称、未払い治療費回収係。
これまで治療費の回収には及び腰だった病院の経営担当者と異なり、未払い治療費回収係は、治療費回収のためにかなりの権限が与えられ、積極的に未払い治療費を回収に当たるというのです。時には、未払い治療費回収係は時として法に触れるか触れないかのようなことも行うのだとか。無い袖は触れないと言い張る患者さんに対し、徹底的に身辺を調査するようで、その調査ぶりは患者さん本人だけでなく、家族、親戚に至るまで調べ、支払ってもらえるところから支払ってもらうまでは一歩も引かないのだとか。 この未払い治療費回収係は病院内でも公にはされていないそうですが、未払い治療費回収係が設置されてから、未払い治療費の額はかなり減少し、効果をあげているとのこと。
正当な理由で治療費を支払えないということに同情の余地はあるとは思いますが、医療機関は赤ひげではありません。日本では国民皆保険です。基本的には全ての国民が何らかの医療保険に加入しているはず。こういった状況において医療機関がかかる治療費を免除するということはあってはならないこと。 実際のところは、経済的な理由で保険料が支払えない人や諸事情で生活保護を受けられない人が多いのも事実。そうした人に対し何らかの公的扶助があってしかるべきだと思うのですが、国や各地方自治体の財政的困窮からそれもままならない状況です。
今後、多くの医療機関で未払い治療費回収係のような担当者は増えていくことでしょう。借金取りは何も金融機関の代名詞ではなく、医療機関においても増えてくる時代がやってくるのかもしれません。
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