歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2007年03月09日(金) レインマンジュニアと共生する社会へ

昨日は下のチビが通っている幼稚園の参観日。いつもなら嫁さんに参観は任せるのですが、昨日は僕も参観に出かけてきました。その訳は、参観の後にPTA総会が開催されるからです。この3月までの任期なのですが、僕は下のチビの幼稚園のPTAの会長。以前からPTA総会と卒園式だけは出席しないといけないということで、僕はあらかじめ診療を休診にしておいたのです。

PTA総会が始まるまでしばらく教員室で園長先生と歓談。その際、園長先生が興味深い話をしてくれました。

皆さんもご存知のことと思いますが、体や心に障害を持った園児がいます。
園長先生曰く、学習障害や発達障害と言われた園児が意外と多いことがわかってきたとのこと。全国調査によれば、5〜6%の園児に学習障害や発達障害が見られるという結果が出たのだそうです。100人中5から6人に何らかの障害があるという事実。
これまでの幼稚園であれば、学習障害や発達障害の園児は入園を許可しなかったり、通園を遠慮して欲しいとお願いする場合もあったそうですが、全国レベルで5〜6%もの園児に学習障害や発達障害があるとなると、もはやそんなことは言っていられなくなります。中でも学習障害は、幼稚園生活をするにあたり初めて明らかとなってくることが多いとのこと。如何に学習障害や発達障害の園児を受け入れ、彼らがよりよく発達していくか、幼稚園側が創意工夫をして教育していかなくてはいけなくなったのだとか。以前であれば、これら園児は親の躾や家庭環境が悪いといって済ませていたのですが、どうも教育の仕方を変えれば、これら園児は十分に成長することができるようなのです。

最近の研究によれば、学習障害児や発達障害児は確かにある能力に関して健常な児童よりは劣っているのですが、それ以外の部分においては正常、むしろ優れている場合もあるようです。例えば、算数の能力や記憶力、芸術性といった能力が勝っているなどなど。
かつてダスティン・ホフマンの主演の映画で“レインマン”という自閉症の男性の映画がありましたが、ダスティン・ホフマン演じる主人公は飛行機に全く乗れない恐怖症がある一方、一瞬にして複雑な計算をやり遂げてしまうという特技がありました。

おそらく、これまでも”レインマンジュニア”は数多くいたことでしょう。他人との共同生活をなじめず、周囲からみれば理解しにくい言動を繰り返す”レインマンジュニア”は周囲から理解されず、避けられ、疎まれるだけの存在でした。しかも、“レインマンジュニア”は親の育て方が悪かったからだと強引に結論付けられていました。先天的、生まれつき何らかの障害があってのことだったにも関わらず、親が一方的に責任を取らされていたのです。親は肩身の狭い思いをせざるをえなかった悲しい現実が多々ありました。
けれども、最近の研究で“レインマンジュニア“には彼ら彼女らなりの思考パターン、行動パターンが確実にあり、この点を理解して接すれば、”レインマンジュニア“も確実に社会に共生していくことができる可能性が見出されてきたのです。

”レインマンジュニア”と共に生きるにはどうすればよいか?
実際のところ、”レインマンジュニア”自身は自分自身を変えることはできません。“レインマンジュニア”の能力から推し測れば、それは仕方のないこと。それならば、周囲が”レインマンジュニア”を理解し、生活しやすい手助けをする。実に大変なことではありますが、“レインマン”や”レインマンジュニア”と共生する社会を目指すには、周囲が余裕を持って懐の大きい態度で接する必要でしょう。

このことは何も障害を持った人に限った話ではないと思います。
人と言うもの、欠点だけを見ようと思えばそればかり目につくもの。特に相手に対して不信感を持っているようならば欠点ばかり目につき、それが元でさらに人間不信に陥ることは誰でもあると思うのです。
それ以上に重要なことは、いくらこちらが望んでいても相手は自分が臨んでいるように変わってはくれないこと。世の中にある人間関係のトラブルの根源はここにあるのではないでしょうか。
それならば、相手の悪いところを見るのではなく、相手の長所をみつめ、言動を変えていく。相手が変わるのを待つよりも、まずは自分が相手に対する接し方を変える。この姿勢が結果的に相手との人間関係を風通しのよいものにでき、相手も変わってくれる可能性ができてくるのではないでしょうか。
実に難しい課題であることは百も承知ですが・・・。

今回の”レインマンジュニア”に対する幼稚園の接し方の変化は、何も障害を持っている人だけの話ではなく、我々の日常生活の中で気持ちよい人付き合いをするための秘訣ともいえるのではないか?
そんなことを自問自答した、歯医者そうさんでした。


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