歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2007年03月06日(火) 三國連太郎への疑問

歯医者で治療をする患者さんの中には入れ歯を装着する患者さんもいます。失った歯の数が多く、ブリッジで対応できない場合、保険診療であれば入れ歯となります。インプラントという手もありますが、インプラントは保険が適用されない自費治療となります。

入れ歯を初めて装着される方は、皆さん一様に不安を訴えられます。気持ちはわからないでもありません。初めて自分の口の中に取り外し式の人工物を入れるわけですから。自分が使いこなせるものか不安になられる方が多いのです。そのような時、僕は患者さんに入れ歯を使っている一人の有名人の話をします。その有名人とは三國連太郎。

僕が紹介するまでもなく、今や日本を代表する大俳優の一人である三國連太郎。佐藤浩市のお父様であります。三國連太郎は上顎が総入れ歯であることは有名な話です。ご本人もインタビューなどで自分が総入れ歯を装着していることを認めているくらいです。

若い頃、ある映画に出演の際、老け役をするために自分の上顎の歯を抜歯してしまったのだとか。本人曰く、麻酔無しで抜歯した歯もあるのだそうです。いくら役作りのためだとはいえ、親からもらった歯を全て抜歯し、総入れ歯にしてしまうとは恐れ入ります。俳優バカここに極まると言っても過言ではありません。いくら役作りのためだとはいえ、自分の歯を抜歯してまで望む役者さんは限られていることでしょう。役作りのために抜歯をしてしまった役者さんの話については、後日取り上げたいと思いますが、僕なんてとても真似できる芸当ではありません。
三國連太郎の演技を見て、総入れ歯をはめているとは思わないことでしょう。僕はそんな三國連太郎を例にあげ、入れ歯もそれなりに慣れるものであることを患者さんに伝えるわけです。

さて、三國連太郎は上顎の歯を抜歯してしまったため、総入れ歯を使用しているのですが、総入れ歯を何種類か持っており、役によって総入れ歯を代えてドラマや映画に望むのだとか。入れ歯もそこまでこだわっているのかと思いたくなるのですが、歯医者としては疑問を感じるところがあります。それは、入れ歯に対する疑問です。

よく、入れ歯をはめている方から“入れ歯を失った時のために予備の入れ歯を作ってくれないか?”と言われることがあります。何か不測の事態が生じ、入れ歯を失った時のため用に欲しいということなのですが、僕の答えはいつも同じです。

“予備の入れ歯は思っているよりも役に立たない。”

理由は単純です。入れ歯というもの、入れ歯を作った時の口の中の状態に合わせて歯型を取り、作っています。その一方で、体というもの、一見すると常に同じように思えても常に新陳代謝が行われています。顔や口の中も常に新陳代謝があり、変化が生じているものなのです。短時間であれば気がつきませんが、何年も時間が経過するとその変化に誰もが気がつくものです。数年前の写真と今の鏡に写し出される自分の姿を見比べ下さい。誰もが自分の体が変化していることに気がつくはず。口の中も同様です。

口の中も新陳代謝が行われ、変化するものである。このことを考えると、せっかく予備の入れ歯を作っていたとしても、いざ必要となった時、その入れ歯が使用に耐えられるでしょうか?そうではないことは容易に想像がつくのではないでしょうか。予備の入れ歯があったとしても、いざ使用するためには、現在の口の中に合わせるように、歯医者で調整して使わないと使えないのです。それならば、予備の入れ歯は、必要となってから作る入れ歯とそれほど大差がないと思うのです。
僕が患者さんに予備の入れ歯を勧めない理由がここにあります。

三國連太郎の場合、何種類もの総入れ歯を持っているということですが、果たしてこれら入れ歯を日頃どのように管理しているのでしょう?愚考するに、絶えず歯医者で何種類もの入れ歯の調整を行い、管理していることでしょう。何種類も総入れ歯を持っていたとしても、いざドラマや映画で使用しようとした時点で使い物にならなくては意味がありませんから。
釣りバカ日誌でスーさんの会話中、上の入れ歯が常に落ちるようでは興ざめです。

まあ、入れ歯の管理に関しては、直接三國連太郎に尋ねるしか真相はわかりません。今後、僕が三國連太郎に会う機会があれば、是非僕の素朴な疑問を尋ね、真相を明らかにしたいものです。


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