歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2007年02月26日(月) 空き部屋となった子供部屋を思う

うちの歯科医院では3年前からデジタル式レントゲン装置を導入し、活用しています。デジタル式レントゲン装置とは、従来のようにX線をフィルムに当てて感光させ、現像するタイプのレントゲン装置とは異なります。X線をCCDセンサーもしくはイメージングプレートと呼ばれるものに感光させ、画像をパソコンで確認するタイプのレントゲン撮影装置です。
デジタルレントゲン装置の利点の一つは現像、定着といった一連の操作を行う必要がなくなったことです。デジタル式レントゲン装置を導入するまでは、毎朝自動現像機に入っている現像液、定着液の状態をチェックし、スイッチを入れ、温度管理をすることが日課となっていました。レントゲン撮影前には、フィルムをレントゲン室の隣にある暗室でセットし、レントゲン装置にセットしてからレントゲン写真を撮影、その後、暗室にて自動現像機に入れ、現像するという作業をしていたのです。
ところが、デジタル式レントゲン装置を導入してから、フィルムに関する諸操作が全く要らなくなりました。デジタル式レントゲン装置の場合、画像はフィルムではなくパソコンの画面に写し出されます。必要な場合のみプリンターでプリントアウトするだけ。そのため、自動現像機が不要となったのです。
不要になったのは自動現像機だけではありませんでした。自動現像機を置いていた暗室も要らなくなったのです。フィルムを感光させないために設置していた暗室ですが、フィルムが要らないデジタルレントゲン装置を導入することで、暗室の必要性が全くなくなったのです。
うちの歯科医院は築30年。思わぬ技術進歩で暗室が要らなくなったことは開業当初では予想もつきませんでした。限られた空間を有効利用する観点からみれば、暗室がデッドスペースになってしまったことは思わぬ誤算といっていいかもしれません。


さて、当初頻繁に使用していた空間が今では使われなくなったことは意外と多いのではないでしょうか?その最たる例が子供部屋ではないかと思います。
子供を持つ家庭ならば、子供が成長するにつれ、子供部屋が必要となります。子供が幼少の頃ならば子供部屋の心配をすることはありませんが、大人近づくにつれ子供も自分だけのプライベートの空間が欲しくなるもの。親としてもそんな子供のために部屋を用意するわけですが、子供が進学、就職、転勤、結婚することを機会に子供部屋が空き部屋になってしまうことがあります。
我が家もそうです。僕には弟が一人いますが、かつては一緒に暮らしていました。弟は大学進学後、下宿生活を過ごし、その後は仕事の関係から自宅から離れた場所に住まいを借り、生活をしていました。自分の部屋を常時使用しなくなり、空き部屋状態となったのです。その後結婚し、子供ができた今では、新しい自分の家を新築しています。二度と自分が過ごした子供部屋に戻ってくることは無い状態と言えるでしょう。

親とすれば、子供の巣立ちによる子供部屋の空き部屋化は、全く予想しなかったことではありません。子供部屋がいつかは空き部屋になる。それならば子供部屋を最初から作る必要はないのではないかと考えそうですが、ほとんどの親はそうは考えません。経済的な問題さえなければ、子供がプライベートに暮らせる空間を家に与えたい。そう思うのは親心ではないかと思うのです。将来空き部屋になってしまう宿命だとわかっていても、子供の成長のためには確保しておきたい。子供部屋とは親の子供に対する切なる成長への願いの空間であるはずです。

空き部屋になった子供部屋ですが、子供が使用しなくなった現在、どのような状態になっているのでしょう?個人的には興味のあるところです。
何人かの人生の先輩に話を聞いてみたところ、子供が暮らしていた当時そのままの状態で残している方が多いように思いました。その理由を尋ねてみると、様々でした。

一つは子供たちが部屋の家具類の持ち出しをしなかったこと。子供部屋に置いてある家具類は、子供が利用していた時代、その部屋にマッチしていた家具類であり、子供が他の場所で生活しようとしても、その場所の実情に合わず、持ち出しをすることができない場合が多いというのです。
また、経済的な理由があるようです。親としては、子供部屋を何か別の目的で使用しようとしても、子供専用に作られた部屋は意外と他の目的に利用することが難しいとのこと。家全体をリニューアルしないどうしようもない場合が多いのだそうです。

意外だったのはは、子供が暮らしていた時を懐かしむ気持ちを持っている方が多かったことでしょうか。
幾ら空き部屋といっても親としては自分たちが愛している子供達が一時期を過ごした思い出の部屋。そうやすやすと改造したくない。時には子供たちの残した香り、記憶を懐かしく感じたいと思うこともあるというのです。親心とは実に切ないものなのかと感じた次第。

ちなみに、我が家の場合ですが、空き部屋となった子供部屋は、将来的には僕のチビたちの子供部屋になる可能性が大です。おそらく、チビたちが使う頃には多少の改造が必要となってくるでしょう。新たに家具類を整えないといけないものもでてくるでしょう。僕が使用してた時代と今とは違いますから。
それでも、僕や弟の思い出詰まった部屋が空き部屋とならず、チビたちが使ってくれる。このことを考えるだけでも、親として感慨深いものがありますね。


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