歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2007年02月20日(火) 一度くらいの浮気なんて・・・

先日、うちの歯科医院にある中年の女性患者さんが来院されました。患者さんの名前はGさん。
“久しくGさんを見なかったなあ?”と思い、過去のカルテを見ていると、僕の記憶どおり、Gさんは6年ぶりにうちの歯科医院に来院したことがわかりました。Gさんが診療室に入ってきました。初診の患者さんにいつもするように挨拶をし、問診をしようとしたところ、Gさんは開口一番、

「先生、正直に告白しますが、私、浮気をしてしまいました。」

思わず面食らった、歯医者そうさん。
“いくら以前に治療をしていた患者さんとはいえ、いきなり田舎歯医者である僕に浮気を告白するとは一体何事だろう?うちの歯科医院は歯や口の中の治療は行うけれども、人生相談所ではないぞ!“
そんなことを思いながらびっくり仰天していると、Gさんは更に言葉を続けました。

「私、以前先生にお世話になっておりながら、最近まで他の歯科医院に通っていました。けれども、事情があって先生の診療所に戻ってきました。浮気は一度だけですから、これから診て頂けますでしょうか?」

Gさんの言う浮気とは、他の歯科医院で治療をしていたという意味の“浮気”だったのです。ほっと胸をなで下ろす、歯医者そうさん。

この手の話はよくあると思うのです。これまでかかっていた歯科医院を受診するのを止め、近くに新しくできた歯科医院や友人、知人に紹介された歯科医院へ通院するようなことはよく耳にする話です。
歯医者として本音を書かせてもらえれば、自分の歯科医院に通っていた患者さんが他の歯科医院へ通っていく、移っていくことは決して気持ちが良いというものではありません。歯科医院を経営する歯医者にとって、患者さんが他の歯科医院へ移っていくということは歯科医院の経営に影響しますから。また、多少ながらも自分の患者さんだと感じていた患者さんがそうではなかったこととなり、現実の厳しさを思いやられることでもあるのです。

だからといって、歯医者が自分の歯科医院に通っている患者さんを強引に引き止める権利はどこにもありません。今や全国のコンビニの1.5倍以上あると言われている歯科医院。数ある歯科医院を選択する権利は患者さん側にあるのです。患者さんが気に入り、信頼すれば同じ歯科医院に通い続けて構わないし、何か事情が生じれば、他の歯科医院を受診しても問題はない。患者さんが歯科医院を浮気するようなことになっても、歯医者はそれを責めることはできないのです。
むしろ、一人でも多くの患者さんを引き止める、一人でも多くの患者さんに信頼されるよう努力することは歯医者に求められていると言えるでしょう。歯医者が患者さんに対し、何か口や歯に異常があれば直ぐに駆けつけられる、かかりつけ歯医者としての魅力を持ち続ける努力を怠ってはならないのです。他の歯医者への浮気は自由だと言っても言い過ぎではないかもしれません。

浮気の甲斐なく、いやいや、元の歯科医院へ戻ってこられる患者さんについて歯医者がどのように感じるか?
僕は普通の浮気のことに関してはよくわかりませんし、他の歯医者がどのように感じるかはわかりません。あくまでも僕個人の考えですが、浮気をしたにも関わらず戻って来られた患者さんに対しては、何も差別するものはありません。むしろ、
“よく戻ってきてくれましたね”と温かく迎えたい気持ちが強いです。浮気をした患者さんがどんな理由、事情があってかはわかりませんし、それを問いたくもありませんが、どんな患者さんでも自分の歯科医院に来院される患者さんは有難い存在です。歯医者である自分のことを忘れず、思い出し、戻ってきてくれた貴重な患者さんなのです。

一度くらいの浮気なんて・・・へっちゃらですよ。


 < 前日  表紙  翌日 >







そうさん メールはこちらから 掲示板

My追加