歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2006年12月13日(水) 当たり前に感謝

何かを無くして初めてそのものの価値を知ることは世の中に山ほどあります。一見すると当たり前に、平凡なことのように見え意識していないものほど、失ってしまうことで初めてその存在価値を意識することが多いもの。悲しいかな、多くの人はその存在が無くなるまでは気がつかないものです。

健康の問題などはその最たる例です。歯の問題のみならず、心臓、肝臓、腎臓、脳といった臓器も健康な時には意識しないものですが、何らかの病気に罹り、治療をすることでその臓器の大切さを痛感するものです。
人間関係もそうでしょう。普段何気なく周囲にいる友人、職場の同僚や上司、後輩、取引先といった人間関係も何か事故やトラブルが生じ、突如いなくなった時、改めてその存在の大切さに改めて気がつかされるものです。
何気なく過ごしている家族関係もそうでしょう。昨日まで元気でいた家族が予想もせぬ事故や事件に巻き込まれ、命を落とし時など、残された家族の落胆振りは想像に絶えません。長らく闘病生活をおくってきた家族の一人が鬼籍に入った場合でも、いざ亡くなってみると家族の存在が自分に与えていたものの大きさに衝撃をうけるはずです。

ところで、先日、僕は仲良くしているウェブ日記書きの友達と話をする機会がありました。その際、ウェブ日記を書き続けられる生活が如何に恵まれているかということを再確認しあいました。
ウェブ日記やブログを書いている人ならわかると思いますが、ウェブ日記やブログを書き続けることは労力がいるものです。日常生活にある程度の時間的余裕、金銭的余裕、健康的余裕、精神的余裕がない人はなかなか継続して書き続けることができないものなのです。お互いに日記を書き続けることができたということは、実に有難いことだということをしんみりと語りあいました。
この友人と話をして改めて感じたことは、失ってからその存在価値に気がつくよりは、日頃から当たり前と思っていることを意識を持つ必要があるのではないかということでした。

実は、仕事柄僕は患者さんに対していつも感じることがあります。
うちの歯科医院は田舎にあるというせいもあり、口の中の衛生状態が芳しくない患者さんが少なからず来院されます。こうした患者さんは時間が経過するとともにむし歯や歯周病が進行し、歯を失っていくケースが多いもの。無くなった歯の数が多くなれば入れ歯を装着せざるをえなくなります。歯を無くし、入れ歯を装着した患者さんの口からは
「入れ歯は噛みにくい、歯が無くなって歯の有難みを知った」と言われる方が多いのです。
患者さんには、失った歯は戻ってこないから今の現状を維持するために入れ歯をはめ、残っている歯を大切にするようにして欲しいと伝えるのですが、僕の本音としては歯が無くなる前に歯の大切さに気がついてほしいのです。
親からもらった大切な臓器の一つである歯をいつまでも大切に扱ってほしいものですが、普段何かと忙しい人たちはなかなかその大切さを認識しないままでいます。一人でも多くの人たちに歯の大切さを知ってほしい。そんな思いで歯医者をはじめとした歯科関係者は努力しているはずなのですが、“歯医者は怖い”というイメージが世の中に浸透しているせいか、歯を失わないために歯医者を訪れる患者さんは限られているのが現状です。
失って後悔するならば、後悔しないように失わない気配り、手立てが必要。歯においては何といっても予防です。日頃からのセルフチェックだけでなく、歯医者による定期的な専門チェックを受け続けることにより歯は長持ちする確率が高くなるものです。このことを歯医者をはじめとした歯科関係者はこれまで以上に訴えていかないといけないと思います。

失って後悔するよりも後悔しないような気配り、手立て。これは歯に限らず何事においても必要なのではないかと思う今日この頃。日頃から自分の周囲にいる人たち、時間、健康に感謝し、そうしたものに報いるように心がけること。これって当然のことのように思うのですが、いざ実践するのは難しいですね。


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