2006年10月26日(木) |
決してお金では得られないもの |
昨日、うちの歯科医院は休診日だったのですが、僕自身は休みではなく一日中動いておりました。午前中は某専門学校での講義、そして、午後からは学校歯科医を勤めている地元小学校での就学時検診があったのです。 実は、午前中の某専門学校での講義は今回が最終回でした。4月から中旬から夏休みをはさみ、今日まで続いた19回の講義。単に講義だけをするならいいのですが、講義には準備がつきものです。講義のため、週末はいつも準備をしていたといっても過言ではありませんでした。 しかも、僕が担当していた科目は、年々刻々と変化する項目が多く、教科書に書かれていることが必ずしも最新の情報ではないことがしばしばでした。そのため、教科書に書かれていたことを一つ一つ確認する作業は予想以上に手間取りました。正直言って、厄介なことを引き受けたものだと思うのも後の祭り。四苦八苦しながら準備をし、講義を行っていたのです。講義だけではなく、レポートの点検や前期試験の作成、採点などもあり、診療の合間に行う仕事としては結構きついものがありました。 そんな講義が昨日をもって終了しました。我ながら試行錯誤で行ってきた講義でしたが、今年度の講義がこれで終わるかと思うと、どこかしら寂しい気持ちが出てきたのは不思議なものです。 そんな中、授業終了後、僕は学生から呼び止められました。 「先生、今日が先生の講義の最後なのでクラス全員で写真を撮りますよ。」 何でも、卒業アルバム用に講義の最後には学生と先生が一同に集まって記念写真を撮るのが某専門学校の慣習なんだとか。僕が真ん中に座り、学生が集まり記念写真を撮ってしまいました。僕の隣に座っていた女子学生は皆一様にピースポーズを取りながらの写真撮影。何ともほんわかとした写真撮影でした。
記念写真を撮ってから講義室を後にしようとすると、ある学生が声を掛けてくれました。 「先生、どうも有難う!」 思わずこみ上げてくるものを感じた、歯医者そうさん。 ほっとしたのも束の間、午後からは地元小学校で就学時検診がありました。ご存知の方も多いとは思いますが、学校保健法で翌年の4月に小学校へ進学する子供は前年の11月末日までに体の検診をうけないといけない決まりがあります。検診の項目の中には歯科に関する項目があり、学校歯科医はむし歯の有無とその他の異常項目を調べ、保護者へ勧告する義務があるのです。今回の就学時検診は、昨年よりも受検者数が少なくなったため1時間半あまりで終了。特に何事もなく終わったなあと思い、地元小学校を後にしようとすると、養護の先生から呼び止められました。 「先生に授業をして頂いた生徒が先生にお礼の手紙を書いたのですけど、その手紙をお渡しします。本来ならもっと早くお渡しするべきだったのですが、遅くなってしまい申し訳ありませんでした。」 夏休み前、僕は地元小学校で低学年を対象に歯の特別授業をは行いました。そのことは以前の日記に書いたのですが、その授業を聞いていた生徒たちが僕に感想とお礼の言葉を書いていてくれていたのです。おそらく、担任や養護の先生が書くよう指導したのだと思いますが、帰宅して生徒全員が書いた文書を読んでみると、非常に温かいものを感じざるを得ませんでした。小学校の生徒たちですから非常につたない文字で書いてはいるのですが、自分が感じたことを正直に書いてくれ、僕に感謝の言葉を書いてくれているのです。 某専門学校の講義にせよ、地元小学校での特別授業にせよ、僕の診療所の治療とは関係がないのですが、僕が診療の合間をぬって準備し、講義、授業をしたことに対し、反応を示してくれる。しかも、最後には感謝の気持ちを表してくれた。
この半年間、何かと忙しく、時には体調を崩し、寝込んでしまうようなこともありましたけど、僕が診療以外にやっていたことは決して無駄ではなかった。人様に対し何か通じたものがあった。僕のような何のとりえも無い、下らない人間が少しは人様のお役に立てた。それだけでも僕が生きている価値はある。
昨日は、決してお金で得られないものを与えてもらった貴重な一日でした。
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