昨今、いじめに関する報道が多くなされている今日この頃。生徒が自殺した原因が周囲からのいじめであったり、きっかけが教師の何気ない言葉であったりといろいろと取沙汰されています。学校長や教育委員会に隠蔽体質があるだの、文部科学省の教育行政の問題が一気に噴出したのと言われているのですが、どうも今回の一連の報道を見ていると、何か偏った報道がされているように思えてなりません。そのような違和感の一つに現場で教育を行っている教師の人の意見が報じられる機会が少ないからではないかと思う今日この頃。
実は、僕の嫁さんは結婚まで某公立中学校で教師をしていました。何年か担任としてクラスを持っていたのですが、僕との結婚を機に寿退職したのです。そんな教師OGである嫁さんと昨今のいじめ問題の話をしていると興味深いことを言ってくれました。
「教師をしていた時、問題を起す生徒を何度も指導するんだけど、そんな生徒に限ってうまくいかないことが多いのよ。不謹慎なのは承知の上だけど、時々、『どうして自分の子供でもない、問題児の面倒をみてやらないといけないのだろう?』と自問自答する時があったよ。」
僕はこれこそが現場に立っている教師の本音の一つではないかと思うのです。自分が誠心誠意生徒指導を行った。ある時は厳しく、ある時は二人ひざを交えて話し込み、保護者と連絡を取り合い、時間外に家庭訪問もする。そんな努力をしているにも関わらず、問題を起す生徒は自分の行為を踏みにじるかのように問題を繰り返し、裏切る。また、保護者と相談しようにも保護者と話が通じない。聞く耳をもっていない。むしろ、逆切れされ自分が攻められる。その一方で、学校には様々な雑用や行事、研究授業の準備等々がある。そんな労働に対する対価としての給料は決して高いとは言えない。 嫁さんが言うには、自分自身が教師を勤めている時にも数人の同僚が休職、退職をしていったというのです。中には自ら命を絶った先生もいたのだとか。嫁さん自身もそんなストレスに悩まされていた一人で、結婚後は全く教師として現場に立つつもりはなかったのだそうです。
この話はたった一人の元教師の話です。たった一人の元教師の言うことが全てであるとは言えません。教師も千差万別、いろんな意見を持っている人がいるはずです。実際に現場に立っている教師は立派に生徒指導を行い、実績をあげている教師も少なくないでしょう。ただ、嫁さんが言っていたことは少なくともマスコミ報道では知ることができない本音であり、現場で苦しんできた人として非常に説得力がありました。
最近、安倍総理の肝いりで教育再生会議なども立ち上がっていますが、メンバー17人の人選を見て驚きました。以下がその人選です。
浅利慶太(劇団四季代表) 池田守男(資生堂相談役)=座長代理 海老名香葉子(エッセイスト) 小野元之(日本学術振興会理事長) 陰山英男(立命館小副校長) 葛西敬之(JR東海会長) 門川大作(京都市教育長) 川勝平太(国際日本文化研究センター教授) 小谷実可子(日本オリンピック委員会理事) 小宮山宏(東大総長) 品川裕香(教育ジャーナリスト) 白石真澄(東洋大教授) 張富士夫(トヨタ自動車会長) 中嶋嶺雄(国際教養大学長) 野依良治(理化学研究所理事長)=座長 義家弘介(横浜市教育委員) 渡辺美樹(ワタミ社長)
メンバーの中に現場の教師が極端に少ないように思えます。ノーベル賞化学者や元オリンピック選手、劇団代表が悪いとは言いませんが、少なくとも現在の教育の現場を肌で感じている人だとは到底思えません。そんなメンバーが教育再生のことをきちんと考え、適切な処方箋を出すことができるのでしょうか?安倍総理は教育基本法改正を含め、教育改革を積極的に進めていきたい考えのようですが、教育には日本の未来がかかっています。もっと現場の教師の声を積極的に耳にしない限り、教育改革は絵に描いた餅に過ぎなくなってしまいます。僕は日本の将来を非常に危惧しています。
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