先週末の夜、我が家では心配していたことがありました。それは、親父がなかなか帰ってこなかったからです。その日、親父は関東方面へ日帰りの公用があったのですが、
「夜9時ごろには戻る」 と言い残して出かけたのです。ところが、夜10時を過ぎても連絡がありません。
”一体何があったのだろう?”
我が家ではかなり心配したのです。親父が携帯電話を持っているのであれば直ぐにでも連絡したかったのですが、残念ながら携帯電話というものを持っていない親父に連絡をとることは不可能でした。
”もう少ししたら知人の先生に連絡してみようか?”
そんなことを言っていると電話が鳴りました。電話は親父からで、我が家でもほっと胸をなでおろしたのですが、どうして遅くなったのか理由を尋ねてみると
「羽田発7時の飛行機に乗ったんだけど、天候不良でなかなか伊丹空港に着陸できなかったんだ。どうも旋回飛行しているなあと思っているうちにアナウンスがあったんだ。『天候不良のため関西空港へ着陸することになりました』。ということで、今関西空港へ着いたばかりなんだよ。」
大阪空港(伊丹空港)に着陸すべき飛行機が天候不良のため旋回飛行を繰り返していた。しかも、着陸時間との関係もあったようで(大阪空港では夜9時を超えると原則として飛行機の離着陸ができなくなる)急遽着陸先を関西国際空港に変更したのだそうです。
関西方面の方からはわかりにくいかもしれませんが、大阪空港と関西国際空港はかなり距離が離れています。大阪空港は大阪府と兵庫県にまたがったところに位置しているのですが、関西国際空港は大阪府の南部の海上沖にあります。大阪空港と関西国際空港は車で約70分走らなければならないくらいの距離あります。電車だと約1時間40分ぐらいです。大阪空港から比較的近くにある我が家にとって、関西国際空港はかなりの遠方になるのです。
結局、親父は深夜の0時過ぎに我が家に帰ってきました。75歳の親父にはかなり体力的に大変だったと思うのですが、意外に元気そうにしていました。親父曰く
「機内で行き先が伊丹空港から関西国際空港へ変更になるアナウンスがあったんだけど、着陸してから乗客全員に3000円の現金が配られたんだよ。だいたい、関西国際空港から大阪市内へ行くことができるくらいの現金だな。飛行機の中には400人くらいいたはずだから合計すれば120万円の現金が配れたことになるなあ。」
いくら天候不良という不可抗力なことが原因だったとはいえ、着陸地変更のために飛行機会社が乗客に支払ったお金はかなりの金額です。思わぬ支出といわざるをえませんが、どうも航空会社には遅延や着陸地変更の場合、何らかの基準があって、その基準に触れる場合には乗客に現金を支給したり、場合によっては臨時に宿泊先を提供したりする場合もあるようなのです。一種の保険のようなものなのかもしれません。多くの乗客を一気に目的地へ運ぶ飛行機です。まさかの時にはとんでもない被害が及ぶこと、そして、その後の保障が大変なことを考えると、今回のような着陸地変更に支給された現金というのはまだ安いのかもしれません。また、乗客が飛行機会社に対して持つ印象も違ったものになるでしょう。実際に疲れきっていたはずの親父があまり不服そうに見えなかったのは、飛行機会社から現金をもらっていたかもしれません。
人間というもの、多くの人が現金に目がくらむものです。飛行機会社はそのことをよく知り抜いているのだなあと感じた、歯医者そうさんでした。
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