僕は歯科医院の院長であると同時に地元歯科医師会の会員でもあります。診療の合間に地元歯科医師会の仕事を行っているわけですが、本業は患者さんの診療です。常に地元歯科医師会の仕事に集中できるわけではありません。このことは地元歯科医師会に所属する全ての歯医者にも言えることです。一方、地元歯科医師会の仕事は各種多様なものがあり、いつ何時どんな連絡があるかわかりません。そのため、地元歯科医師会では事務局に選任の事務員を1人、パートの事務員を2人配置し、地元歯科医師会の事務の仕事をしてもらっています。
地元歯科医師会の事務局の仕事ですが、僕自身何度も事務局で仕事をしたことがあるのでわかるのですが、息つく暇もないくらい忙しいものです。絶えず問い合わせや依頼の電話やファックス、メールが送られてきます。それらを瞬時に適切に処理しなければなりません。微妙な判断は上司である地元歯科医師会の幹部役員にお伺いをたてないといけません。何よりも神経を使う仕事の一つは歯科医師会会員への情報伝達でしょう。保険診療情報の変更や各種講演会、例会の案内、そして、地元歯科医師会が委託されている各種検診事業に参加する担当医のへの通知、連絡です。
普段、診療の合間に地元歯科医師会の仕事を行っている歯医者は、地元歯科医師会の仕事をつい忘れがちなところがあります。そんな歯医者の先生の注意を促ため、地元歯科医師会では各担当の先生に事前に仕事があることを電話やファックスで連絡してくれるのです。何とも至れり尽くせりの事のように思うかもしれませんが、地元歯科医師会にとってはリスク管理の一つなのです。地元歯科医師会の仕事を担当する先生のミスは全て地元歯科医師会の評判に跳ね返ってきます。たった一人のミスが組織全体の評価につながる。これはどんな会社、組織においても言えることですが、歯科医師会という組織も例外ではありません。普段患者さんの治療を行っている合間に歯科医師会の仕事を行っている歯医者であればなおさらで、自分ではそのつもりがなくても、つい大切な地元歯科医師会の仕事を忘れてしまい、多方面に迷惑をかけてしまう可能性があるのです。
このように地元歯科医師会の事務局の仕事は、地元歯科医師会に所属する歯医者にとって必要不可欠なものなのですが、彼ら、彼女らも人間です。ミスというものもあるものです。実は、先日地元歯科医師会の事務局の事務員は連続して2回ミスをしてしまいました。しかも、そのミスの対象は僕だったのです。
先週、地元歯科医師会が行っている事業の一つに地元市民を対象に行う歯科相談という事業がありました。これは、地元市民を対象に歯や口の健康についての悩み、相談を地元歯科医師会に所属する歯医者が答える事業で、無料で行っています。この事業は既に何十年も行っている事業の一つで地元行政の広報誌に掲載されていることもあり、常に予約が詰まっているぐらい人気のある事業なのです。 先週、この歯科相談の担当が僕だったのでした。僕自身、久しぶりの歯科相談の担当でしたのであらかじめ注意はしていたのですが、事前にあるはずの事務局からの連絡が全くなかったのです。不安になった僕は、歯科相談前日に事務局に問い合わせの連絡をしたところ、
「あっ!先生、大変申し訳ありませんでした。私たちが先生へ連絡しなければなかったところ、連絡をすることを忘れていました。」
それから数日後の夜のこと。僕は地元歯科医師会の事務局へ出向きました。その際、歯科医師会の来月予定が書かれたホワイトボードを確認したのです。 "確か、来月に僕はある歯科医師会の仕事の当番にあたっていたはずだ"と記憶していたからです。ところが、そのホワイトボードには僕の仕事の当番であるはずの日に僕の名前が書かれていませんでした。僕は自分の予定表を確認したのですが、予定表には当番日の記載があったのです。 "僕が知らないうちに当番からはずれたのだろうか?" そう思った僕は翌日事務局へ電話をかけ確認しました。返って来た返事は
「先生、重ね重ね申し訳ありません。こちらがホワイトボードに書かないといけない先生の当番日を書き漏らしていました。それにしても、どうして先生ばかりご迷惑をかけるようなことをしてしまったのでしょう?申し訳の言葉もないくらいです。」
事務局の事務員も人間です。ミスがあるのは仕方のないことだと思います。 しかも、普段の事務員の忙しそうな仕事ぶりを何度も見ている僕は、ミスをしてしまった事務員を責めることはできませんでした。たまたま連続したミスを犯した対象が僕であったのだろうと信じています。 事務員に話を聞いてみると、最近、対処が難しいことが連続して続いていたとのこと。そのため、集中力が散漫になることがあったようなのです。 確かに事務員の言うことは一理あると思います。誰しもあまりにも切羽詰ったり、時間に追われていたりするとケアレスミスを犯してしまいがちです。けれども、一度ミスを犯してしまうと取り返しのつかないことに発展する可能性もあります。
結局のところ、多くの人が指摘しているように、ミスを防止するには小さなケアレスミスを犯した時点で原因をしっかりと分析し、今後二度とこのようなミスを起さないように具体的対策を立てることしか方法はないのではないでしょう。今回の場合、地元歯科医師会の事務員のミスを連続して被ったのは僕でした。正直言って決して気持ちの良いものではありませんが、ミスを責めるよりは互いによく話をして今後ミスを起さないよう、何を注意すればよいか検討する方が得策のように思えました。ミスをした人を責めるのは簡単ですが、お互い人間同士。持ちつ持たれつの関係です。自分が常に完璧ならいいのですが、少なくとも僕はそうではありません。僕自身、いつ何時ミスを犯すかわかりません。相手のミスは他山の石として自分の問題として考え。そして、相手のミスには感情を抑えながら冷静に対処する。そんな積み重ねが人間関係の信頼につながり、いざ自分がミスを犯してもさりげなくカバーしてくれる人間関係を築くことになるのではないか?
気持ちの余裕をもつことは非常に大切なことであることを感じた、歯医者そうさん。
非常に難しい課題ですが・・・。
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