歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2006年10月05日(木) 南の島での歯科医院開業

昨日、自宅の郵便ボックスを開けてみると僕宛に一通の葉書が届いていました。その葉書にはこう書いてありました

○○島に引っ越しました
空と海の青さ、人のあたたかさにつつまれて
心豊かな暮らしができそうです。
一度遊びに来て下さい。


その下には手書きで

開業することになりました。12月の予定です。


葉書の送り主はM先生。M先生は僕が某大学の大学院時代、同じ研究室で世話になった先生の一人です。M先生は某大学の口腔外科学講座の先生だったのですが、忙しい臨床の合間に僕が所属していた研究室で学位の仕事をしていたのです。

M先生の初対面での印象は非常にぶっきらぼうとした感じで、とっつきにくい先生だなあという感じでした。けれども、実際に何回か話をしているうちに打ち解け、公私ともに世話になるようになった間柄になったのです。

僕が大学院を修了し、研究室を去ってからも付き合いは続きました。僕が大学院を修了後、間もなくM先生も学位を取得され、その後、某大学の口腔外科学講座から某大都市の病院の歯科口腔外科部長として派遣、赴任されたのです。その時のM先生はうれしさ一杯で、

「僕は一般の歯科治療はせずに口腔外科一本でいくよ!」

と声高らかに宣言されていたのが今でも昨日のことのように思い出されます。

そんなM先生だったのですが、大学の医局との折り合いが悪かったせいか、本人に何か問題があっとのかどうかわかりませんが、その後某病院の歯科口腔外科部長を交代させられ、いくつかの病院を転々とさせられていました。毎年僕の元に来る年賀状には“今年は○○病院です”とか“某大学へ呼び戻されました”などという直筆の文言が書かれていました。なかなか一定の場所で仕事ができないM先生は苦しいなあと思っていた矢先に届いたM先生からの葉書だったのです。

大学に残って仕事をしていてもポストがなく開業せざるをえない歯科医師が多いのですが、M先生もそんな悲哀を味わった一人といえるでしょう。大学や病院で仕事をしている歯医者にとって最後の選択肢が開業であるのが現実です。M先生も開業せざるをえない立場に追い込まれたのですが、それにしても開業先が○○島とはちと驚きました。日本本土よりも台湾の方が近いのではないかと思われる○○島。南の常夏ともいえる○○島で開業とは思い切ったことをしたなあというのが正直なところです。

歯科医師は過剰で今や都市部においては至るところに歯科医院が乱立する時代。多くの歯科医院と競合しそうな場所を避け、南の○○島で開業するというのは思い切った決断だったと思います。M先生のことですから、これまで様々なしがらみを立ち、リラックスした精神状態で歯科治療をしたいという思いもあったかもしれません。

○○島は本土とはかなり離れた島ですが、島の大きさとしてはそこそこ大きな島です。歯科医院を開業できるくらいのインフラ、人も住んでいそうです。むしろ、歯科医が少なく、歯の治療に苦慮している人が多いくらいかもしれません。子供さんの教育が問題かもしれませんが、いずれ本土の方へ進学するにしても、まだ小学生のお子さんの情操教育といった意味では長い目でみればプラスになるかもしれません。

M先生の○○島での開業がうまくいくように願って止みません。


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