歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2006年06月20日(火) 縁の下の力持ち 歯科技工士紹介番組を見て

昨日、一日の診療が終わり自宅に戻ると親父が熱心にあるテレビ番組を見ていました。一体何を見ているのかと思ってみてみると、それはこの番組でした。

この番組では岐阜県で仕事をしている24歳の歯科技工士の仕事ぶりと歯科技工士の紹介をしていました。僕が歯科技工士について説明するよりもうまく説明されていますので、歯科技工士について知りたい方はここを参考にして欲しいのですが、歯医者に比べあまり目立つことの無い歯科技工士、今や歯科治療においては無くてはならない存在だということは断言できます。

それでも敢えて歯科技工士とは何かということについて書きますと、歯科技工士とは、患者さんの差し歯や詰め物、入れ歯といった技工物を製作する専門家です。むし歯や歯周病で歯が欠けたり、歯を失ったりした時、歯医者は欠けた歯や失った歯の代わりになる詰め物や差し歯、入れ歯を作ります。作るといってもほとんどの歯医者は患者さんの診療に忙しく、詰め物や差し歯、入れ歯を作る時間的、体力的余裕がないのが実情です。そこで、歯医者は詰め物や差し歯、入れ歯のための歯型を取り、どのような詰め物や差し歯、入れ歯をつくるか設計をし、指示をして歯科技工士に製作を依頼します。歯科技工士は歯医者が取った歯型の模型と指示を元に、時には実際に患者さんの口の中を歯医者と見て、話をしながら技工物を製作するのです。一部の歯医者は診療の合間に技工物を作りますが、今や技工物の製作に関しては、歯医者と歯科技工士は分業態勢ができあがっていると言ってもいいでしょう。

歯科技工士は歯科医院で勤務している人もいれば、歯科技工物を専門に製作している歯科技工所で働いている歯科技工士もいます。どちらかというと、歯科技工所で勤務している歯科技工士が多いのが現状です。うちの歯科医院も何十年も世話になっている歯科技工所があり、診療日には、担当の歯科技工士が技工物を作るための歯型模型を取りに来てくれています。これは非常に助かっています。本来なら歯型模型を歯科技工所へ持っていき、技工物の製作をお願いしなければいけないのですが、毎日何人もの患者さんの治療をしているためにそれができません。歯科技工所としても、何件もの歯科医院と契約をしている方が経営がうまくいくことから、サービスの一環として担当者が歯科医院に歯科技工物の注文を取りに来てくれます。

歯科技工士は、実際に作った歯科技工物を直接患者さんにセットすることはできません。歯科技工物をセットできるのは歯医者だけなのです。このことは歯科技工士法という法律で定めれていることなのです。

歯科治療の分業ということから言えば、歯科技工士は歯医者と対等な仕事のパートナーであるべき歯科技工士でなければいけないのですが、実際のところは歯科技工士は歯医者の下請け的な立場に甘んじなければなりません。このこと自体は、歯科技工士法という法律的な縛りの関係から仕方のないことではあるのですが、優秀な歯医者には必ずといっていいほど優秀な歯科技工士がおり、裏方として支えています。また、優秀な歯医者になるためには優秀な歯科技工士から様々なことを学ばなければなりません。お互いに持ちつ持たれつの関係が歯医者と歯科技工士の関係なのです。

これは歯医者と歯科衛生士との関係でもいえることですが、患者さんの口の中の健康を守るためには歯医者だけでなく、歯科衛生士や歯科技工士らの協力なくしては成り立たないのです。ともすると、歯医者は自分だけが患者さんの治療をしていると思いがちなのですが、そもそも医療とは医者を頂点とするチーム医療体制が整わないと成立しません。そのことを肝に銘じ、日々の患者さんの口の中の治療をすることが歯医者の使命ではないかと思います。

歯科技工士は歯医者にとって無くてはならない必要不可欠な、縁の下の力持ち的な存在なのです。


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