歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2006年06月21日(水) 歯科用金属のよる思わぬ副作用

今日の日記も昨日の日記に引き続いてのテレビネタです。

昨夜、この番組で掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)という病気が取り上げられていました。この病気は皮膚に発疹や肌荒れ、水疱などが多発する病気で原因が何か不明だった病気でした。最近(といっても十数年以上前ですが)、この掌蹠膿疱症の原因の一つが歯のむし歯や歯槽膿漏、そして、歯科用金属と関連していることが指摘されたのです。

今回、掌蹠膿疱症の原因としてこの番組で取り上げられたのは、むし歯の治療に使用されたアマルガムという合金でした。アマルガムというのは主に銀、スズ、銅からなる合金粉と水銀を連和し、むし歯を除去した歯に詰める詰め物のことをいいます。アマルガムは1970年代頃にむし歯治療に盛んに使用されていました。当時、アマルガムに代わるむし歯修復用の詰め物材料が開発されていなかったこともあり、多くの歯科医院で使用されてきましたし、健康保険適用材料として今もなお認められている詰め物材料です。水銀を使用するということで、以前からその危険性が指摘はされてきたのですが、多くの研究結果によれば、アマルガムからの水銀蒸気あるいは水銀イオンの溶出は微量であり、急性水銀中毒あるいは慢性水銀中毒を生ずることはないというものではないというのが定説でした。

実は、僕の口の中にも7本の歯にアマルガムが詰めてあります。既にアマルガムの処置を受けてから20年以上経過していますが、今もって何ら持続性の体の異常は見られません。親父の口の中にもアマルガムが詰まった歯があります。このアマルガムは詰めてから既に40年以上経過するそうですが、齢75歳になる親父にも特定の皮膚症状は見られません。全ての人がアマルガムによって掌蹠膿疱症の症状が出るわけではありません。アメリカ歯科医師会では何年も前にアマルガムについての安全性を宣言しているくらいです。

ところが、最近になり安全であると言われていたアマルガムを除去したら長年悩んできた不定愁訴が治ったという話がいくつも出てきたのです。中でも原因不明だと言われていた掌蹠膿疱症の患者さんの中にアマルガム除去によって症状が改善した患者さんが何人も出てきたのです。アマルガムだけではありません。歯科で使用している歯科合金にアレルギーがある人がいることがわかってきたのです。

皮膚科専門医はこのような金属アレルギー患者に対してパッチテストと呼ばれる検査を行い、特定の金属にアレルギーがあるかどうかを調べるようになってきました。その中で、歯科治療で用いる歯科合金にアレルギー反応があれば、歯科治療時に歯科合金以外の材料で治療しなければならない注意義務が歯医者に出てきたのです。

ただし、誤解のないようにしておきたいのですが、歯に詰められた金属が全てアレルギー反応を起こしたり、掌蹠膿疱症の原因であるかというと、そうではありません。確かに歯に詰められた金属、中でもアマルガムが原因であることはあるのですが、アレルギー反応や掌蹠膿疱症の原因は多岐に渡っているます。口の中だけでなく、鼻や咽頭部の異常が掌蹠膿疱症の原因であることもあるのです。また、所謂アレルギー体質であるかないかということも大きく影響しているとも言われています。ある皮膚科の先生の話では、入れ歯を調整しただけで掌蹠膿疱症が完治した例もあるとのこと。歯に詰めた金属製の詰め物が全てが悪いというわけではない一例です。

いたずらにアマルガムを悪者扱いする必要はないとは思いますが、アマルガムを除去すると掌蹠膿疱症治った患者さんがいるのも事実。掌蹠膿疱症の原因をもっと様々な観点から究明していく必要があるのは事実だろうと思いますし、歯医者も掌蹠膿疱症についてもっと関心を持ち続け、皮膚科医と情報交換を頻繁に行う必要があると思います。


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