歯医者を15年以上続けてきた僕ですが、治療の途中で未だに
”どうしたらいいんだろう?”
と悩み、あせる時があります。患者さんの治療を行う時には患者さんの現状を把握し、診断、治療方針をたててから行いますすが、実際に治療を行ってみると自分が治療前にイメージを抱いていたこととは異なることがあるのです。
先日も、ある患者さんの親知らずの抜歯を行っていましたが、親知らずの根っこが僕が想像しているよりも湾曲していたため予想以上に抜歯に手間取ったのです。抜歯を行う前にはレントゲン写真で親知らずの状態を確認はしました。抜歯の対象となった親知らずはほとんどが顎の骨の中に埋まっており、しかも、横向きになっていました。そのため、親知らずを抜歯するには顎の骨を一部削り、横向きになっている親知らずの頭の部分である歯冠と根っこの部分である歯根を切断する。そして、切断した歯冠を先に取り出し、その後歯根ぶを取り出す。その際、歯冠や歯根が取り出せない場合には、歯冠や歯根を必要に応じて更に削ったり、周囲の顎の骨を削ったりしながら抜歯を行います。
そのようなパターンが骨の中に埋まった横向きに生えた親知らずの抜歯なのですが、人の顔が同じ顔がほとんどないように歯の生え方も様々なものです。自分が想像していたようには異なり、抜歯に時間がかかってしまうこともしばしばなのです。先日の場合も自分なりに立てたプランを元に親知らずの抜歯をしようとしたものの、いざ抜歯しようとしても歯がびくともせず、僕は内心あせりました。
”もしこのまま抜歯できなければどうしよう?” ”長時間かけて抜歯できなかった場合、患者さんにどう言い訳しよう?” ”下手に顎の骨を削りすぎて後で後遺症が出ないだろうか?”
そんなことが僕の頭の中をよぎるのです。
皆さんは、
”そんなあせっている暇があったら少しでも抜歯できる方法を考えろ!” ”歯医者だったらどんな歯でも抜歯するのが義務だろう!”
と思われるかもしれません。その通りです。自分ができないと焦る間に以下に現状を打破し、抜歯を行うことができるかどうかは歯医者の力量にかかってくるところで、僕もただ単に口をくわえてみているだけではなくそれなりの対策を考え、実行しながら目の前の困難を解決しようとしていますが、小心者の僕はどうしても、未だに最悪のことをイメージしてしまうのです。
”できることならその場から逃げ出したい” ”誰か代われる人がいるなら代わってほしい”
など逃げたくなりような思いを強くする時があるのです。実際はそんなあせりを患者さんに感じさせたりはしていないつもりですが、処置に必要以上に手間取った時には、いつも背中に冷や汗が流れるような錯覚に陥ります。こんな情けないことを書くと皆さんにいたずらに歯の治療を怖がらせるだけかもしれません。他の歯医者はどうか僕はよくわかりませんが、僕は実際に歯の治療に手間取った時に必要以上の不安が頭をよぎる性質なのです。 僕はまだまだ未熟者だと思う瞬間ですね。
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