2006年06月01日(木) |
おしゃぶり裁判沙汰で感じたこと |
昨日、ネットサーフィンをしていると、6歳の娘の顎が変形したのは、おしゃぶりを3歳まで使い続けたためであり、その責任はおしゃぶりを販売した会社にあるとして母親がおしゃぶりを販売した大手ベビー用品会社に約1000万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こしたというニュースを見ました。この女の子は、生後2カ月ごろから1歳まで1日約15時間使用。その後も3歳10カ月で歯科医に止めるよう言われるまで、就寝中に使ったとのこと。その結果、あごが変形したほか、歯並びが悪くなったそうで、歯並びは矯正治療で改善したが、受け口や舌足らずな発音、口でしか呼吸しないなどの症状が残ったととのこと。完全に治すには、今後13年間かかるとして、治療費などに相当する賠償を求めたそうです。
実は、おしゃぶりについては小児科医や小児歯科医の間で様々な意見があるのが実情ですが、最近では、過度の指しゃぶりやおしゃぶりは歯並びや顎の骨格に悪影響を与えるので少なくとも2歳までにはやめさせるようにすることが必要であるという意見が大勢を占めてきています。そのあたりの見解は日本小児歯科学会がこのような見解を出されていますので参考にして頂きたいたいと思います。
そのような最中、おしゃぶり製造メーカーが過度のおしゃぶりに対する注意書きを書いていなかったというところが問題となるのですが、この原因の一端は、小児科医や小児歯科医の間でおしゃぶりに対する意見が統一されていなかったことにも責任の一端があるといってもいいかもしれません。どちらかというと、小児科医の法は子供の精神的な成長の面からのおしゃぶりの効用を重視したのに対し、小児科歯科医ではおしゃぶりの使用が歯並びや顎の骨格への悪影響を及ぼす例を数多く見てきたことから、過度のおしゃぶりの使用に警告を発してきていたのです。
僕自身も歯医者として明らかに過度のおしゃぶりの使用で、咬んでも上の前歯が下の前歯を被わない開咬と呼ばれる子供や奥歯のかみ合わせの乱れがある子供を見てきました。話を聞いてみると親がおしゃぶりを3歳、またはそれ以上使用させてきたようです。
先輩の小児歯科医の先生から話を聞いてみると、おしゃぶりがブームになったのは、亡くなったイギリスのダイアナ元皇太子妃が自分の息子たちにおしゃぶりを積極的にさせていたことが世界的にブームとなり、日本でも子供におしゃぶりをさせることがおしゃれであるかのようなことが急速に広がったのだとか。
今の親の世代の人たちの間でおしゃぶりがどのような評価をされているかわかりませんが、僕個人としてはおしゃぶりが無くても問題ないのではないかと思うのです。僕の二人の子供の例ですが、二人ともおしゃぶりよりもお母さんの本物のおっぱいの方を好みました。嫁さんは母乳が出たということもあり、赤ん坊だった子供たちはお腹が空くといつもお母さんのおっぱいが欲しいと意思表示し、いつも嫁さんはおっぱいをあげていました。二人の子供とも十分過ぎるほどおっぱいを飲んだと思います。上の子などは2歳8ヶ月に至るまでおっぱいを飲みました。その影響もあり、乳歯の何本かにむし歯ができてしまいましたが、小さいむし歯でしたので僕が何とかむし歯を治しました。おっぱいを長く与えすぎる弊害みたいなものが上の子供に出たかもしれませんが、僕は歯医者としてもっと早い時期に離乳させたかったのはやまやまでしたが、子供の精神的な成長を考えた時、2歳8ヶ月まで離乳させなかったのは仕方が無かった、むしろ今から考えればプラスだったのではないかと考えるくらいです。そんな経験が僕にはあるものですから、個人的にはおしゃぶりが必要なのかと問われると疑問符をつけざるをえないのです。
ただ、世の中には子供の側にずっといたくても働いている女性の中には仕事に復帰せざるをえない人が多々いらっしゃいます。そんな女性の子供にとっておっぱいの代わりとしてのおしゃぶりというのは精神衛生上必要なものなのかもしれません。おしゃぶりを全否定するわけではありません。ただ、先に紹介した日本小児歯科学会の見解にも書かれていることですが、2歳以上のおしゃぶりというのは歯並び、顎の骨格に悪影響を与えるリスクが高いのです。そのことを知らずして、または知っていても子供がおしゃぶりを欲しがるからといって惰性でおしゃぶりを続けるのは如何なものかと思います。確かにおしゃぶりメーカーがおしゃぶりの危険性について説明書に文言を入れていなかったということは問題かもしれませんし、メーカーとしての責任を問われても仕方ないことかもしれませんが、子育てをする親としておしゃぶりの利点、欠点はある程度知識として知っておく義務があるのではないかと思うのです。少なくともおしゃぶりの利点、欠点を何も知らないということで一番迷惑を被るのは生まれてきた子供です。おしゃぶりについて親が盲目的に信じるというのはリスクがある。今回の裁判はそのことを世間に認めさせるのに良い機会かもしれないと感じた、歯医者そうさんです。
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