歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2006年05月12日(金) シーラントについて

全国各地の幼稚園、小学校、中学校、高校では、4月後半から6月にかけて検診が行われているはずです。検診の中には口の中の歯や粘膜、噛み合わせや顎関節を調べる歯科検診も行われ、学校歯科医を中心とした歯医者が生徒たちの検診に当たっています。僕もそんな学校検診を担当する学校歯科医の一人であり、5月後半に学校検診を行うことになっています。

そんな学校検診でしばしば目にする処置の中にシーラントというものがあります。シーラントとは一体どんなものなのでしょう?シーラントとは、乳歯の奥歯である乳臼歯や生えてきたばかりの永久歯の奥歯である小臼歯、大臼歯の表面にある多数の溝を埋める材料のことをいいます。

どんな奥歯にも、歯同士がかみ合う面には多数の皺のような溝があります。乳歯や生えてきたばかりの永久歯の小臼歯、大臼歯の場合、その溝は深く、歯ブラシで磨こうとしても歯ブラシの毛先が届かないほど深いものもあります。そのような溝の深い歯の場合、深い溝に歯垢や食べかすや歯垢が入ると歯磨きで除去することが難しく、残ってしまうことがあります。しかも、乳歯や生えたばかりの永久歯は通常の永久歯よりも幼弱で、歯質が弱い特性があります。そのため、溝が深い乳歯や生えたばかりの永久歯の小臼歯、大臼歯はむし歯になるリスクが高いことが多いのです。それならば、食べかすや歯垢が歯の深い溝に入り込まないよう、予防的に深い溝に詰め物を詰め、塞いでしまう処置がシーラントなのです。

シーラントの処置の大きな特徴は、リン酸という酸を歯面に塗り、化学的処理のみ行った後、詰める詰め物なのです。通常、歯に詰め物をする時には、詰め物をする場所は削るものですが、シーラントの処置において、歯を一切削らなのです。ということは、シーラントはむし歯の治療で用いる材料ではなく、あくまでもむし歯にならないように予防的に用いる材料だということを意味します。

それでは、あらかじめシーラントで歯の深い溝を塞いでおけばむし歯にはならないのではと思われるかもしれませんが、実際のところはそうではない場合があります。何せシーラントで用いる詰め物は歯を削らず化学的な処理だけでくっついているわけですから接着が弱く、時として一部が破損してしまうことあります。この破損が生じるということは、せっかく塞いだ歯の溝の一部が露出することを意味します。むし歯にならないように予防的に溝を塞いだつもりでも、溝の一部が塞がず露出しているとその部分にむし歯菌を含んだ歯垢が入り込み、むし歯になるリスクが高くなるのです。

シーラントをしたからといってむし歯にならなくなったというわけではないのです。シーラントを行えばシーラントがちゃんと保たれているかどうか確認するために、定期的に歯科医院でチェックしてもらわないといけないのです。もし、定期的なチェックでシーラントに破折が見つかった場合には、直ちにシーラントの再修復が必要となります。

学校での歯科検診を行っていると、シーラントの処置を受けている生徒をしばしば目にしますが、そのような生徒の中にはシーラントが欠けているにもかかわらず気づかずそのまま放置している生徒がいます。シーラントの処置を受けた経験のある子供さんが周囲にいましたら、必ず歯科医院でシーラントが保たれているか定期的にチェックを受けるよう伝えてあげてほしいと思います。


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