歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2006年04月12日(水) 歯医者間のデジタルディバイド

既にこちらの日記でも書いたことですが、全国各地の保険医療機関では4月1日より診療報酬が改定され、これを元に患者さんに治療費を請求しております。今回の診療報酬改訂は、マイナス改訂ということで全ての保険医療機関の経営者は、診療報酬が下がっていることを実感していると思います。
中でも、保険医療機関の中でも歯科の診療所においては、他の医科の診療所以上にマイナス改訂がなされ、実態として10パーセント前後の診療報酬が下がる事態が予想さています。僕自身も今度の診療報酬が下がったことを日々実感しています。初診料は以前に比べ3分の2に下がりましたし、日々よく行う診療行為に対する診療報酬が軒並み下がっています。中には診療報酬が上がったところもあるのですが、微々たるもので結果として月末に集計予定の診療報酬は下がることは必定です。

今回の診療報酬改訂のもう一つの特徴は、患者さんに対し行った指導などを書くことを義務付けられたことです。これまで指導内容はカルテには記載したものの、患者さんに対しては口頭でよかったことが、紙に文書化し、患者さんに手渡さないといけないことになったのです。診療行為に対する曖昧さを無くし、インフォームドコンセントの一手段として評価されるべきことだとは思いますが、この文書化は非常に事細かいところまで行わないといけないもので、結果として患者さんが手にする文書の数はかなりの数に及ぶこともあるのです。治療に出かけた帰り際には、何枚もの説明文書をお土産として持って帰ることがあるのです。

文書化といえば、診療報酬が改訂されるにあたり、歯科医院では国に対し様々な届出を提出しないといけません。これは施設基準届出と呼ばれるもので、いくつかの診療行為に対し、診療報酬を請求する歯科医院には該当する条件をクリアしないと診療報酬として請求できないというものです。例えば、

”歯科医院には常勤の歯医者二名以上、もしくは、常勤の歯医者一名及び常勤の歯科衛生士が一名以上配置されていること”

”当該地域において内科等を標榜する保険医療機関との連携体制が確保されていること”

といった縛りとも言うべき条件が課せられるのです。そんな縛りの中で興味深いものがありました。それは電子加算というものです。電子加算とは、主に診療所の業務にコンピューターを導入している医療機関に診療報酬で加算を認めようというものです。診療報酬に電子加算を導入することで医療機関での電子管理を浸透させようという国の意図なのですが、このような電子加算に四苦八苦している人がいます。それは、パソコンを使用していない医療関係者です。ある年齢より上の層の人たちはパソコンというだけで遠慮したい、関わりあいたくないという意識が強い人がいます。人間というもの、ある程度年齢を重ねると新しいことを行おうとしても面倒くさく、遠慮し避けてしまいたい傾向があるものです。パソコンなどはそういったものの最たる例ではないでしょうか。今年75歳になる僕の父親もパソコンといっただけで全く手に触れようとせず、パソコンの利便性は頭の中ではわかっているものの、いざ自分で手に触って使おうという気はありません。パソコンを使った仕事は全て僕にさせようとするのが常です。うちでは僕がパソコンを使用するので問題ないと思うのですが、周囲にパソコンを使用する習慣の無いベテランの歯医者が新たにパソコンを使用するというのは思っている以上に大変なことのようなのです。いわゆるデジタルディバイドが歯科界でも存在しているのです。

国の立場としていえることは、医療機関で電子化を推進することにより、医療機関が請求する診療報酬を正確に把握しやすくなり、不正請求を防止し、管理しやすくなる利点があります。今後、診療報酬明細書のオンライン化が進められていますが、それに先立てて電子化を進める事は、診療報酬明細書のオンライン化を進める上で、大きなステップとなるのは確実です。

そうなるとますますパソコンが苦手な医療関係者は窮地に追い込まれます。パソコンを何時までも敬遠していると診療報酬は下がったまま。デジタルディバイドが診療報酬格差を生み出す。そのような時代が間近に迫っていると言えます。


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