歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2006年04月04日(火) 父親になった日

今日は僕の上のチビの誕生日。8年前の今日、上のチビは産声をあげたのですが、それと同時に僕が生まれて初めて子供の父親になった日でもあります。正直言って、8年前まで僕は自分が父親になるなんて想像もつきませんでした。学生時代、僕は

”将来結婚をし、子供ができるのだろう”

と何気なく想像したことは何度もありましたが、本当に僕と共に人生を歩んでくれる伴侶ができるのかわかりませんでした。

”広い世の中の何処に自分の伴侶となるなる女性が生きているのだろう?

そんな女性といつ出会うことができるのだろう?”

と思いながら生きていた学生時代のそうさん。ましてや、自分自身が家庭を持ち、子供ができるとは考えも及びませんでした。

思いもよらぬ縁で、10年前に僕は嫁さんと出会い結婚を果たした訳ですが、結婚してからもしばらくは自分達夫婦に子供がいる生活は想像がつきませんでした。もちろん、するべきことはしていました!が、本当にコウノトリが僕たち夫婦に子供を連れてきてくれるのか疑心暗鬼だったものです。結婚して間もなく、嫁さんは妊娠したものの流産を経験したものですから、本当に僕たち夫婦が子宝に恵まれるかどうか不安でなりませんでした。

そんな中、結婚して1年後に嫁さんが再び妊娠しました。流産しないかどうか心配していたのですが、お腹の子供は無事に大きくなり嫁さんのお腹は日に日に大きく脹れあがっていきました。

子供が順調に大きくなっていっているのはよかったのですが、僕は一つ心配していたことがありました。それは、お腹の子供の出産予定日が4月1日だったということです。暦の上では4月1日は4月の始まりであり、年度始めではあるのですが、4月1日生まれの子供は早生まれとして分類されるのです。一年一区切りであるわけですから、一年のうちある一日を境にして年度がかわるのは仕方がないことではあります。

”よりによってお腹の子供が4月1日に生まれたなら、どうしよう?同学年の幼稚園、小学生の生徒の間で生活をするとなるとどうしても成長のハンディがあるのではないか?”

僕自身、2月生まれでしたので経験があるのですが、小学生の間はどことなく他の同級生との間に何らかの差があるような気がしてならなかったものです。今となっては全く気にならないことではあるのですが、当時の僕は言いようのない不安みたいなものを感じることが多かったことを記憶しています。そんな経験がある僕ですから、自分の息子は早生まれであってほしくないと密かに願っておりました。

8年前の4月1日の深夜、午前0時を過ぎて4月2日になった時、僕は思わず胸をなでおろしました。これで生まれてくる子供は早生まれでは無くなったと。

ところが、僕自身勝手なものだと思うのですが、今度は予定日を過ぎてからいつ生まれるのか不安になってきました。お腹の子供が大きくなりすぎ自然分娩では生まれることができず、帝王切開になるようなことはないだろうか?そんな思いをもっていた4月4日の早朝のことでした。忘れもしません。その日は土曜日。病院に勤務していた僕は休みの日でした。嫁さんが破水したため、直ぐに病院へ連れて行きました。当時のことを振り返って嫁さんは
「そうさんはいつもと違って相当慌てていたわよ。」

自分でもかなり慌てていたのは自覚していました。何せ出産に立ち会うのは初めての経験でしたから。自分が出産するわけではありませんが、無事お腹の子供が僕の目の前に出てくるか期待と不安で一杯だったのは無理もないことです。

病院に入院した嫁さんに陣痛が現れ、苦しみながら無事に出産したのは4月4日の夕方のことでした。嫁さんの出産に立ち会うことができた僕は、子供が出てきた瞬間の声とその姿を間近で見ることが出来ました。

「子供さんの心臓の音を聴きますか?」

僕が勤務していた病院の同僚の産科の先生が僕に聴診器を渡してくれました。僕は生まれたばかりの子供の心音を聴きました。

「ドッドッドッドッドッドッドッドッド・・・・・・・・・」

実に力強い心音に僕は生命の神秘を感じざるをえませんでした。しかも、誰の子供でもない自分の子供の心音なのです。僕は思わず目頭が熱くなりました。そして、僕は実感したのです。僕が父親になったことを。

あの時から8年。その時の子供は小学校2年生となります。既に赤ちゃん気はとうに無くなり、少年になりつつある上のチビ。周囲の人は、上のチビが僕によく似ているといいます。確かに僕のDNAの半分を受け継いでいるわけですから、僕と似ていても不思議ではありませんが、僕の遺伝を受け継いでいる子供がいるということは不思議な気がします。そんな上のチビは僕のことを”パパ”と言います。まだまだ上のチビが大人になるには先が長いですし、僕がパパとして役割を果たしているかどうかはわかりませんが、僕を初めて父親にしてくれた上のチビには、これからも健やかに育って欲しいと願わずにはいられません。


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