My life as a cat
My life as a cat
DiaryINDEXpastwill


2020年06月17日(水) イスキア島の風




リュカの用事に付き合ってマントン(Menton)へ。年末のストライキ、大雨による崖崩れ、そして外出禁止令とあれこれあって、近いのに本当に久々にやって来た。リュカが用事を済ませている間ひとりでぶらぶらと散歩。朝のマルシェを歩く。お気に入りのフロマージェリー。ちょっとかっこいいイタリア人のお兄さんがよくオマケしてくれる感じのいい人気のお店。ここでほんの小さなチーズを手に入れて、その数歩先の100年以上使い続けてる古いオーブンで昔ながらのパンを焼くブーランジェリーで無骨なパンを数切れ切ってもらって、最後にビーチへ抜ける出口の八百屋で桃や葡萄を買ってビーチで朝食にしたな、と昨年の夏を懐かしく思い出す。妊婦になった今年の夏は、大方の製品が低温殺菌処理されてないフロマージェリーのチーズは食べられない、と素通り。たっぷりの果物と野菜だけ買い込んだ。昨年なら今日みたいに少しだけ汗ばむくらいの時期にはまだ水の冷たい海に飛び込んでた。でも今年はお腹を冷やしちゃいけない、と真夏になるまで海水浴はお預け。お気に入りのブティックで服を見た。細部までよくデザインされた白いレースのワンピースが気に入って鏡の前であててみる。素敵!いいじゃない、と思ったのと同時にこれから胸やお腹がもっと膨れてくるということを思い出す。今年は今しか着られなくても来年なら・・・、いや来年は赤ちゃんを背負って暮らすことになるのに、こんな白のレースのワンピースなんかで澄ました顔で歩いてはいられないでしょ・・・。がっくりと落胆してそのワンピースを置いて店を去った。ひとりで身軽で自由気ままな人生だったはずなのに、気付いたらこんな風になってた。生まれてくる赤ちゃんの顔を見たらきっとこんな気持ちはころりと変わる。でも今は重い体を引きずって失ったものを嘆く気持ちが大きい。

街歩きにも退屈してきた時、以前は夜しか開けてなかったイスキア料理のレストランが開いてるのを発見した。イスキア島はいつか訪れたい場所のひとつでこのレストランもずっと来てみたかった。ランチはここで食べると決めてリュカと合流した。





















ピットレ、イカのフリトゥラ、煮た白身魚にはオリーブオイルとレモン、ムール貝のパスタ、茄子とパルミジャーノ、イタリアの南部の料理は油をたっぷり使ったものが多い。わたしは動物性の脂(チーズやバター)は本当に少量でげんなりしてしまうのだが、オリーブオイルたっぷり料理には強い。そしてデザートやお菓子もめちゃくちゃ甘くて重い。たまにはダイエットなんて言葉は忘れて思いっきりこういうの食べるのもいいじゃない。背後には白いピアノが置かれてて、食事中オーナーが生演奏を奏でてくれる。波の音、シンプルで美味しい料理、美しいピアノ演奏、心地良い風、少し沈んでた心はみるみる元気を取り戻した。聞いてみると家族経営のこの店の人々は一家でイスキア島から来たのだそうだ。フランス語はあまり出来ないと言い、英語で話した。料理については"家庭料理の域を出ない"という感想はリュカと一致したが、とても感じの良い人々で、素敵な昼下がりの時間を過ごすことが出来た。

帰り道、ふと思った。妊娠したのが今じゃなかったら?20代は子供なんて絶対嫌だと思ってた。30歳になった時、ものすごい好きな人がいて、彼と家族を築きたいと思ったのに離れ離れになってしまった。35歳前後、子供を産まないならなんのために人生ずっと鬱陶しい生理と付き合ってきたんだ、と思ったが、相手がいなかった。そのうちそんな考えもすっかり忘れて、30代後半は仕事をして旅行して自由気ままという人生が楽しいように思えてきた。40代に入って結婚。やりたいことはまだまだ沢山あるけど、この年だからこそ自分のやりたかったことと子育て両方やりこなせるような気がしてる。今じゃなかったらいつ?そう考えたら今こそがライトタイミングなのだと思えた。

Michelina |MAIL