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2020年06月03日(水) |
アタシは大丈夫よ!? |
リュカの患者さんが愚痴ってたことが、まさにここ数ヶ月わたしがぶつぶつ言ってきたのと同じことだった。
「パティスリーに行ったらさぁ、カウンターはガラス張りにされてて、小さな窓からマスクしてない売り子がボンジュール、ムッシューとか喋ってさっ、手元のパンに唾飛んでるんだよ。何なの、あの客は感染者かもしれないけど、自分は絶対感染してないみたいな姿勢は。潜伏期間があるのに無知過ぎるよ」
この田舎にはそんな人がわんさかいる。
「アタシは大丈夫よ」
とみんな言うのである。
「パティスリーはね、苦情が出たのかここ数日売り子もみんなマスクするようになったよ」
「そうか、それはよかった」
「でもね、BIOの店はいまだにマスクしてないオーナーが籠持って出てきて"野菜には触らないでね、欲しいの言ってくれたらアタシが取ってあげるから"とか喋って、彼女の唾かかった野菜客に渡すの」
「最悪だぁ。先日マルシェでマスクしてないマダムが3人べらべら近距離で駄弁ってて、ちょっと冗談っぽく"近すぎないかね?"と言ってみたら"アタシは大丈夫よ"って言われてさぁ。僕のような年取った男が何言っても誰も聞いてくれなそうだから、もうあんまり言わないけど」
「え!!あなたのようなフランス人の年取った男にこそ頑張って欲しいわ。わたしなんて一発で外国人ってわかるこのめちゃくちゃなフランス語のアクセントで、"アジアの小娘"みたいな見た目で思っても言いにくいことばかりで」
以前図書館で勉強してた時、毎日大きな音を出してYOUTUBEを見てるムッシューがいた。うるさくてストレスに感じて"もう少し音下げてもらえますか?"と言いたかったけど、フランスの公共の図書館でフランス人の初老のムッシューが、"アジアの小娘"にそう言われたら気分を悪くするに違いないとずっと黙ってた。でもそれがずっと続いたある日、ついに言ってしまったのだった。その時は大人しく音をさげてくれたけど、帰り際クリスティーヌにこう言ったんだそうだ。
「この図書館ではイヤホンとかの貸し出しとかないの?退屈な人間が僕がうるさいとか文句つけるからさっ」
(しかし、"そういうサービスはないけど、図書館では静かにしてね"とクリスティーヌにも釘をさされておずおず去ってったらしい)
外出禁止令が解けて、この町のティーネイジャーなんて広場でマスクせず10人くらいでべたべたつるんでるのをよく見かけてぞっとする。10代に命の重さを解れといっても難しい。彼らの親の世代だって"アタシは大丈夫よ"なんて言ってる人ばかりなのだから、もうしょうがない。
リュカの病院でひとり感染者がでて職員と患者全員総勢400人ほど検査を受けたのだが、その結果全員陰性だったそうだ。ひとまずほっとした。