My life as a cat
My life as a cat
DiaryINDEXpastwill


2020年03月20日(金) 大変よくできました

この町の店はどこもかしこもまともに仕事ができない。商品に価格がついていない、陳列された商品の価格とレジに入力された価格が違う、レジの秤が壊れてる(即ちキロ単位で売られる野菜や果物の価格が違ってくる)、バスケットごと計算してる、数種類ある野菜の名前が把握できてない、タグとそこに置かれた商品が別物、釣り銭が正しくないなど。毎日レシートにちゃんと目を通し、訂正してもらう。店も店だが、こんな営業を続けてられるのは客も客だからだ。だれもレシートをチェックしたりはしない。相当大きなミスがない限り、誰も気付かず終わる。毎日1ユーロこうやってお金を失ってったら1年でいくら、10年で?なんて計算するわたしは、商業主義の国から来た異邦人丸出しなのである。毎日"トマト1個で400gってありえないでしょ、バスケットの重量は抜いてね"、とか"PROMOって書かれてるのにレジ価格が定価だよ"、とか、"釣り銭がUSドルだよ"、とかそんなことを申し立てて後ろに長い行列を作っているのである。店の人々は明らかに面倒くさそうにする人もいるが、客から提示価格以上取ったりするのは罪だから、いやいや計算し直して返金する。あちらが謝ることはない。なぜなら何人もが働いてる少し大きめの店では、みんな"間違ったのは自分じゃない"という心構えだからで、責任感など持っていない。個人商店の八百屋のお兄さんだけは、ある日突然涙目で謝罪した。

「毎日のようにあなたは来てくれて、毎日のように僕は計算ミス。本当にごめんなさい。でもね、信じて。僕が計算ミスするのはなぜかあなたの時だけなんだよ」

「でしょうね、だってわたし以外にレシートちゃんと見る人いないでしょ」

「・・・」

大きな町ならこの店がダメならあの店ってやれるけど、ここじゃ選べない。ここで結婚するということは、こういうちゃんとできない店とも結婚したようなもの。ダメ夫と気付いてももう良い面だけ見て暮らしてかなきゃならないような。でも幸いそのダメ夫は心根は素直で決して悪い人間ではないのだ。希望は捨てるもんじゃない。うんざりするけどそう自分に言い聞かせる。

スーパーではこんなんで顔を覚えられてるので、わたしをレジに認めるとレジの人は緊張の面持ちになり野菜の価格を確認に行き、出てきたレシートに一度目を通してから"うん、大丈夫よ"とか呟きながら渡したりするようになった。わたしがレシートに目を通して、"Merci. Bonne journée"とニッコリすると胸を撫で下ろす。そうやってミスの頻度は3回に1回くらいだったのが、10回に1回くらいに減った。

外出禁止になった初日、店員全員がゴム手袋をしていた。でもマスクなし。ゴム手袋をした手であちこち触り、ついでに自分の鼻をちょっと拭ったり、頬を掻いたりしててもうめちゃくちゃ。でも3日後の今日は全員マスクも着けてた。やっと誰かが、手袋だけでは意味をなさないと気付いたんだろうな。子供の頃から風邪をひいたらマスクして他人にうつさないようにするのを当たり前として育った身からすると、まるで猫や犬にマスクを着用させたみたいに妙にぎこちないフランス人達の様子が愛らしくも思えてくるのだった。


Michelina |MAIL