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2019年04月03日(水) |
マダム”テンプラ”を食べる |
ひとりでニースを散歩。当てもなくぷらぷらと歩いて土産物屋なんかを眺めて歩く。観光客がちらほら増えはじめたものの、今日は小雨がちらついているんで、いつもよりうんと静か。お気に入りのイタリアン・レストラン(Di Più)でランチを食べようと店の前まで行って、こんな文字を見つける。"Plat du jour : tempura de gambas avec salade asiatique(海老の天ぷらとアジア風サラダ)"。
「これ、ライス付くの?」
「ノン。バゲット付くよ」
そうか・・・。まぁいいや、食べてみるか。このレストランはモダンで活気に満ち溢れてて、南仏の非効率なのんびりムードに飽きて、日本が恋しくなったなんて時には良い。サーブする人々の肌色は様々で、みんな身なりをきっちりとしているし、ちゃんと教育されていてきびきびと動く。オーダーして10分かからずわたしのランチがやってきた。ぎゃー、こんな天ぷらみたことない!大きな海老が4本頭ごと揚げられてる。こりゃフリトゥーラってやつで、決して天ぷらではないのである。だいたい添えられてるのはスウィートチリソース。しかし、これが美味い!フランスやイタリアでは骨付きの魚はみんな嫌がるのだが、わたしは魚介類の骨や殻をしゃぶりながらゆっくり味わうのが大好きだ。わたしの父がいつも夜な夜な酒を飲みながら、魚を箸で口に運び、一口食べては骨を口から出して、ゆっくりゆっくり味わっていたのを思い出す。頭の殻も尻尾も割ってキレいに中の身まで食べる。周囲を見回すとみんな同じものを食べていたが、皿の上に殻や尻尾など山積みで終わりにしている。キッチンの近くの席にいて、"シェフ"と呼ばれる人が忙しそうに前を何度か行き来していたのだが、その度にぎょっとしてわたしの前で一瞬動作を停止する。そして殆ど皿の上に何もなくなった頃、ついに彼がわたしの前で立ち止まる。
"Madame! Ça va?"
シェフは客に声をかける必要はないのだが、わたしがあまりにもきれいに平らげるんで気にかかったのだろう。
"Oui!! C'est très bon!!"
とグーサインを出すと、彼は本当に嬉しそうにウィンクして仕事に戻って行った。ここのデザートもとても美味しいのだが、もうおなか一杯で、カフェで終わりにして、チップを置いて店を出た(わたしはケチンボなので相当気に入った時しかチップを置かないのである)。
帰りにMonoprixに寄って食料を買う。いつも人のいるレジは混んでいるので、セルフのレジで済ます。マシンは無駄口をきかず、客を待たせて誰かとのんびりビズビズの挨拶を交わすこともなく、30分ごとに煙草やカフェに席を外すことはない。釣り銭を間違えることもない。まして給料が少な過ぎる、労働条件が悪過ぎるなどと文句をたれストライキにでることもない。何もかもが機械化されて人の仕事がなくなっているというが、当たり前だ。わたしが雇用主だったらマシンのほうがよほど信頼できるもの。日本はまだまだセルフのレジは少ない。そして人はマシンの如く忠実に働くのであるからセルフである必要もない。