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結婚したと思ったら、今度は滞在許可証の更新という新プロジェクトがはじまった。コトがまともに運べば"プロジェクト"なんて呼ぶほど大それたことではないのだが、なにひとつまともでないのだから心してかかるべし。更新はニースのプレフェクチャーの管轄になる。GoogleでHPをサーチすると、レビューは★1.9。100人以上が苦情を並べ立てているではないか。悪い予感むんむん。HP中に自分のケースを探すが、どれに当てはまるのかわからない。"質問があれば電話か郵送で受け付ける"と書かれている。電話受付時間は日に1時間半だけ。仕方なく電話をかける。"忙しいのでかけなおしてください"という自動アナウンスが流れる。何度かけても繋がらない。翌日もトライ。繋がらない。他の電話をとっているのではなくはじめから自動アナウンスにセットアップしてある様子。アルジェリアからの移民だというリュカの患者が教えてくれた。
「知人が働いてるんだけどね、電話はとらないって言ってたよ。電話とる暇があれば別の仕事をこなしたいんだって」
だったら電話番号なんて書くな、と言いたい。しかも"わたし達のモットー"とかいうページに"その1、電話は5コール以内にピックアップします"だって。大ウソつきだ。次の手を考える。電話をとれない人がレターに返事を書いて投函できるとは思えないからレターは没。メール・フォームはこのケースの人は対応できないと書かれているが、もうその手以外に残っていない。ダメ元で書き始めるが、フォームのエラーで送信できない。なんてこった。ページの下に"苦情はこちらで受け付ける"と書かれているのでそこへメールしようと思ったらこちらもリンク切れ。ギャー!次の手は代表番号へ電話する。意外や意外繋がった。しかし返ってきた答えは思った通り。
「わたしの管轄じゃないんでわかりませんけど、あの部門は人がひとりしかいないから電話はとれないんじゃないですか」
どいつもこいつもだ。しかしやっと繋がったので食い下がる。
「必要書類について確認があるのだけど、どうしたらいいんですか」
「直接来てください」
それだけのために行くの?
「うん。そう。たったひとつ質問するために2時間くらい並ぶの。しかも朝の早い時間に並ばないと窓口が閉まった時点で帰されるよ」
とアルジェリア移民の患者。
行って並ぶ以外ないのか、と諦めた頃、ぽろりとリダイヤルした電話が繋がったのである。奇跡!リュカと手を取り合って喜ぶ。必要書類はわかった。
翌日、結婚のための書類を提出した市役所へ行き交渉する。フランス語に翻訳されている出生証明書の原紙を貸して欲しい、と。この出生証明書はマルセイユの日本領事館で作成してくれるのだが、通常受け取りはマルセイユまで出向かなければならないのだ。書類1枚のために電車で5時間もかけて、そうなると泊りがけで・・・と気が遠くなる。そんなことを説明すると、無口な担当者は、
「わたし達も原紙が必要だからちゃんと返してね」
と貸してくれた。助かった。
「え?あの人が?貸してくれたの?奇跡!」
とクリスティーヌ。奇跡は2度起きた。と喜んでふと気付く。ここで暮らしていると"奇跡"のハードルがいかに低くなるかということに。
他県ではもうこんなひたすら並んで順番を待つというような原始的なやりかたはしていなくて、オンラインで予約できてしまうようなシステムがあってもう少し進歩している様子。すご〜い!と叫んでまた気付く。すご〜い!のハードルも相当低くなっていることに。
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(写真:ちょっと早いが誕生日にかこつけてリュカが買ってくれたラザーニャのお皿。フランス人の作家さんがデザインしたもの。彼女の作品は手描きで1点ものばかり。南仏風な大らかな雰囲気が感じられて素敵。)