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2018年05月12日(土) |
Promenade du Soleil |
リュカの旧友とマントン(Menton)のカジノ前で待ち合わせ。待ち合わせ時間から10分ほど過ぎた頃、10mほど先に一台のバイクが停まり、何やら長い紙に包まれた物を抱えた男性がこちらに向かってくる。
「アンジェロだ。なんか手に持ってるよ。バゲットか?」
ざわざわしてるとわたしのほうへピンポイントで向かってくる。ビズを交わしてからにょきっと翻した手に握られていたのは白い薔薇だった。3人のマドモワゼルに1本ずつ薔薇を手土産にやってきたのだった。
「でた〜!!ラテン・ラヴァーだ!!」
とみんなに冷やかされてもイタリア人のアンジェロは当然といった澄ました顔で歩き出した。ラテン・ラヴァーは本当にみんなチョコレートや花をプレゼントするのが大好き。これをもらって喜ばない女性はなかなかいないだろう。時期がくれば枯れて、食べてしまえば跡形もなく無くなってしまうというのが一瞬でカッと甘く燃え尽きるラティーノのノリを反映しているようで面白い。
静かな裏手のイタリアン・レストランのテラス席でピッツァやパスタを楽しんだ。食後に"ヴェッキオ・アマーロ・デル・カーポ(Vecchio Amaro del Capo)"というカラブリアのハーブ酒をお店からのサービスで頂いた。養命酒が好きな人なら気に入るだろう味。こういう味、すごく好き。太陽ばかりがじりじりと照り付けて平地もなく農産物にも恵まれずない不毛の土地。貧しくてうらぶられたような場所、と聞いた。そこに根をはって暮らす人々には生活が重くのしかかってそうは見えないのかもしれないが、外側から見れば太陽と青い海の煌めく美しい場所。"うらぶられた場所"で潮風に吹かれて太陽とわずかな水だけを頼りに強く根を張るハーブを思って、一揆に喉に流し込んだら腹の奥から力が沸くような気がした。
食後はプロムナード。ビーチは肌を焼く人からもう泳ぐ人まで賑わっている。沢山歩き、ジェラートを食べた。リュカの友人はみんな医療関係の仕事に就く人ばかりで、そのせいか本当に穏やかで気が優しく気性にむらのない安定した人ばかりだ。
「ねぇ、毎日体の不自由な人々と一緒にいて苛立ったりすることはないの?」
とリュカに聞いたことがある。
「ないよ。ストレスを感じることはあるけど、苛立つことはない。患者自身が一番自分自身に苛立ってるんだから、僕は絶対に患者には怒らないって決めてるから」
みんな心にこう誓っているのかもしれない。わたしのような言葉の不自由なストレンジャーにも本当に優しく接してくれる。フランス語のマシンガン・トークにはまだ参加できないけど、とても楽しい一日だった。
今夜はモナコ・グランプリ。ラテン・ラヴァーは渋滞に巻き込まれる前にとバイクを飛ばして去って行った。
ハーバーから臨む旧市街。
パースでも春になるとあちこちに咲いていたボトル・ブラッシュ。
ジャン・コクトー美術館の外にあるベンチ。